本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

東芝大裏面史ほか

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大企業の内幕ものは企業の本質を押さえる上で大変参考になります。出版各社もこの分野に力を入れていて、パナソニックやシャープ、住友銀行などヒットを連打しています。大企業をテーマとした書籍はこれまで数々出版されてきましたが、経営書・ビジネス書の視点で書かれた作品は一般性に乏しくともすれば提灯記事のようなものも少なくありませんでした。内幕ものは企業のあり方を通じて人間の生き方やこの社会の行く末といった深いテーマが柱としてあるので、多くの人の関心を呼ぶのかも知れません。

書店としても同名の書籍が揃うとインパクトがあります。教養書としてまとめ買いしていく放送局員も散見されます。

東芝 大裏面史」FACTA編集部(文藝春秋

 経済産業省原子力発電を輸出することによって国を繁栄させる「原発ルネッサンス」という政策を省是とした。東芝は、その大きな政策の流れの中、米国の原子力大手、ウェスチングハウス三菱重工業が提示した額を遙かに上回る54億ドルで買収する。しかし、3・11の福島原発事故で、東芝が作った3号機もメルトダウン。それを機に原発事業は先進国のみならず、新興国でも存亡の淵に立たされる。すでに死んでいるはずの東芝が、まだ生き長らえているのはなぜか?そこには、日本の核燃料サイクルを維持させるための経産省の深謀があった。東芝幹部が回し読みしていたという会員制情報誌による徹底調査!

 

東芝 大裏面史

東芝 大裏面史

 

 

東芝 原子力敗戦」大西康之 著(文藝春秋

二〇〇六年、米原発メーカー・ウエスチングハウス買収をきっかけに、解体の危機へと追い込まれた東芝経産省の思惑、国策にすがる幹部、暴走する原子力事業部員の姿を、社内極秘資料を元にあますところなく描く。『日経ビジネス』在籍時代からスクープを連発した、第一人者によるノンフィクション決定版。 

東芝 原子力敗戦

東芝 原子力敗戦

 

 

 東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」松崎隆司 著(宝島社) 

大企業は嘘をつく!失敗の全内幕を明かす。離反する監査法人、隠ぺい体質、派閥意識、不正会計の闇、原発の罠。切り売りされる6兆円企業―。奈落の底に落とした戦犯たちを炙り出す!

第1章 浮上する粉飾決算疑惑
第2章 戦前から東芝を支配する派閥意識
第3章 深すぎる不正会計の闇
第4章 隠ぺい体質の根幹
第5章 虚飾まみれの第三者委員会
第6章 「東芝解体」までの道のり
第7章 米国の罠にはまったウェスチングハウス買収
第8章 離反する監査法人
第9章 消滅する総合家電メーカー

 

東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人

東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人

 

 

あるかしら書店

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「あるかしら書店」ヨシタケ シンスケ*1ポプラ社

 この本屋さんでは、「あったらいいな」という本や夢いっぱいのグッズが、次から次へと飛び出します。月明かりの下でしか読めない「月光本」、読書に付き合ってくれる「読書サポートロボ」、ふたつの本を合わせて初めて読むことができる「2人で読む本」などなど、読んだらきっと「本ってやっぱりいいよねぇ」と言いたくなってしまうエピソードが満載。大人気の絵本作家ヨシタケシンスケさんの豊かな発想力がめいっぱい詰まった、ますます本が好きになってしまう一冊です。

購買層の関係から学参本と絵本は取り扱っていませんが、こどもの本の動きは気になります。電子デバイスが普及しても、スマホを自由自在に使いこなせる就学児童はいないからです。

ですから、ドラえもんを軸とした売り上げをほこるコロコロコミックは、劇的に売り上げを落とすことはなく、小学館の業績安定に寄与していることもよくわかります。

「子どもに読み聞かせる気持ちでページをめくったら大人の心にも響いてしまった」という売り方は、ずるいようですが正しい方法なのかも知れません。本屋の思いを形にしたのがこの本です。

あるかしら書店

あるかしら書店

 

http://www.osoraku.com/

 

*1:1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に、『しかもフタが無い』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(以上、講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)などがある。2児の父。

石原豪人: 「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター

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石原豪人: 「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター」中村圭子 編(河出書房新社

昭和40年代、少年雑誌の「大図解」で大活躍!!伝説のイラストレータ石原豪人の全軌跡。力・毒・色気あふれる―50年に及ぶ画業が初めて1冊に!

ひと昔前、児童文学の棚に並んでいた本の中に、空想科学やオカルトをテーマにしたものがありました。いわば、キワモノ児童書です。

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それらの本のイラストを数多く手がけたのが石原豪人です。

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戦記物やメカや未来を小松崎茂はそれなりの評価を得て復刻を果たしましたが、怪物や色気のある妖怪を描いた石原にはなかなか光が当たりませんでした。

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挿絵、イラスト、付録等、従来の美術館が扱わなかった題材をとりあげた展覧会企画してきた弥生美術館学芸員中村圭子さんが石原義人に注目。編集した本が発行されました。

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石原豪人(「ごうじん」:1923年3月15日-1998年6月19日)の本名は石原徹。島根県出身で、日本大学芸術学部中退です。18歳で満州に渡り、映画看板などを描いていましたが、体調を崩したため、1955年頃(昭和30年)から比較的体力を使わなくて済む挿絵画家としての仕事を始め、以後40年間にわたって精力的に描き続けました。

筑波嶺夜想曲 石原豪人-「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター:少年時代の記憶に息づく作品達

 

 

 

つるとはな5号

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「つるとはな5号」つるとはな編集部

「年上の先輩に話を聞く小さな場所」をテーマにした編集が人気の不定季刊誌です。骨太できめ細かい編集にファンが定着しています。高齢者の方に話を聞く機会が少なくなったいまだからこそ価値のある本です。世の中に埋もれ朽ち果てようとしている人生の達人を捜し当て、長話になりがちなインタビューを達人の技で編集した読みやすさが人気を支えています。

 

つるとはな第5号

つるとはな第5号

 

 

革命のファンファーレ ~現代のお金と広告戦略~

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「革命のファンファーレ ~現代のお金と広告戦略~」西野亮廣 著(幻冬舎

クラウドファンディングで国内歴代最高となる総額1億円を個人で調達し、絵本『えんとつ町のプペル』を作り、30万部突破のメガヒットへと導いた天才クリエイターが語る、"現代のお金の作り方と使い方"と最強の広告戦略、そして、これからの時代の働き方。

自分のことは自分が責任を取るという姿勢は、行うは難しい生き方です。躊躇して悔いを残すのではなく、行動を持ってけじめをつけるというのが著者の取った生き方のようです。一億総"忖度"の時代に、忖度に真っ向から対峙する芯が通った著者の姿勢は(炎上商法も連想しますが)躊躇する自分を勇気づけてくれます。

キングコング 西野 公式ブログ - 奴隷をやりたけりゃ、勝手にやってろ - Powered by LINE

奴隷を続けたけりゃ、そのまま平和に勝手に続けとけ。
それが嫌なら声を上げろ。 
くれぐれも、他人を引きずり込むな。

……というようなことを、ものすごーく優しくく書いた本が、この秋に出るニャン🐱
予約してくれニャン😻
ボク、みーんな大好き😻😸

 公式ブログの記事によると、秋にも新刊が発表されるようで、その告知が面白い。反骨の人を支持する放送局員は少なくありません。「絵本は正直あまり動かなかったけど、エッセイは動くので部数確保しておきたい」とは書店員の声です。

 

革命のファンファーレ ~現代のお金と広告戦略~

革命のファンファーレ ~現代のお金と広告戦略~

 

 

「変」なクラスが世界を変える! - ぬまっち先生と6年1組の挑戦

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「「変」なクラスが世界を変える! - ぬまっち先生と6年1組の挑戦」沼田晶弘 著(中央公論新社

教育界のみならずビジネス界からも注目されている小学校教諭、「ぬまっち」。子どもの「自ら成長する力」を引き出すユニークな教育は、掃除の時にダンスしたり、「夢」の卒業遠足を実現させたり、子どもが先生の代わりに教えたりと、一風変わったものばかり。型破りな教室で、子どもたちは自己肯定感を高め、自らチャレンジする力を育てていく…そんな「世界一のクラス」の奇跡の成長物語。

ぬまっち(沼田 晶弘)@小学校教諭 (@88834) | Twitter

2012年8月28日の中教審文部科学省中央教育審議会)の答申で注目を集めたのが「アクティブ・ラーニング」という考え方です。

「従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である」

平たく言えば「受け身の学び」から「自発の学び」への転換です。私も二十歳を過ぎた学生さん相手に実技実習した時、学生さんたちの態度から「待ちの姿勢」を感じました。失敗してもかまわないからとにかくやってみる学生はなかなか出てきませんでした。

高度成長期をモデルとして形作られたわが国の教育は、知識量の重視だったといえます。しかし、情報が国境を越える現代では、グーグルやアマゾン、フェイスブックを見ればなんとなくわかるように、知識量で勝負する勤勉実直型ではたち行かなくなっています。

そこで登場したのが能動的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」という考え方だったのです。本書を浅く読むと、掃除の時にダンスしたり、「夢」の卒業遠足を実現させたり、子どもが先生の代わりに教えたりと、金八先生のような熱血教師の変な授業が印象に残ります。本質はかなり深い構造改革のモデルケースであり、グローバル化する世界への対応策として解釈すると世界が違った景色に見え始めます。

「変」なクラスが世界を変える!  - ぬまっち先生と6年1組の挑戦

「変」なクラスが世界を変える! - ぬまっち先生と6年1組の挑戦

 

 グローバル教育 気になるキーワード VOL.4 アクティブ・ラーニング | G-Edu

「ポスト真実」の時代

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「「ポスト真実」の時代 「信じたいウソ」が「事実」に勝る世界をどう生き抜くか」津田大介日比嘉高 著(祥伝社

イギリスEU離脱、アメリカ大統領、共謀罪、安保法制、原発事故、フェイクニュース、オルタナティブ・ファクト―嘘をついたもの勝ちの世の中に、なぜなったのか?最前線を疾るメディア・アクティビストと気鋭の日本文化・文学研究者が徹底分析!

ポスト真実」の時代は最近流行のキーワードです。情報を伝達する媒体の早さや量が加速度的に増加したため、私たちはかつての経験則でことの真贋を見抜く技を失いつつあります。どうしたらいいのだという不安を感じたとき、一つの指針として手に取る本です。芥川龍之介の「羅生門」のように事実と真実の戦いは今始まったことではないからです。アマゾンのレビューが核心を突いています。

本書は「ポスト真実」(ウソがまかり通る時代)のさまざまなエピソードや
その現象、どうやって向き合えば良いのか、
また、自分が加担していないのか?とか
どう生き抜くのかが書かれていていますが
正直、根本的な解決策というのは弱いかも・・と思いましたが
今の時代を認識しておくのに、一度は読んでおいた方が良い内容の種類の
本だと思います。