本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

クリストファー・ノーランの嘘 思想で読む映画論

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クリストファー・ノーランの嘘 思想で読む映画論」トッド・マガウアン 著(フィルムアート社)

これからのハリウッド映画を牽引する映画監督、クリストファー・ノーラン。彼の映画で外せないテーマである「フィクション」や「嘘と真実」を通して、全作品を読み解いていく。各作品において「嘘」がどのように中心的な役割を果たし、観客である私たちは、何に翻弄され欺かれ、ノーラン特有の巨大な「嘘」に巻き込まれていくのか。

そのようなノーラン映画の構造に着目し、虚構(嘘、仮想、夢、偽装など)を作り込むためにどのような仕掛けを施しているか、その映像と物語の展開の巧みさを、哲学や精神分析理論からも考察。ノーラン映画ファンはもちろん、哲学や精神分析学に関心のある方まで、読み応えのある1冊です。

映像関係の人が多く出入りすることから、映画の本それもアイドルやスターといったファンを相手にした本ではなく、作る側の本にアンテナを伸ばして揃えなくてはいけません。映画を見る暇はほとんどないので耳学問。ベストセラーのように動く分野ではないので、注文書籍を手がかりにして揃えます。話題になる作品を手がけるのも大変だと入荷した本を見ながら思います。

フォロウィング」「メメント」「インソムニア」にあるような主人公が自分に向ける嘘,また一連の「バットマン」シリーズにおける,ヒーローが抱える嘘・矛盾。そして,その集大成といえる「インセプション」における嘘を嘘でくるむような物語。
この本のおかげで,この「嘘」という点から改めてノーラン作品を見たいという気持ちになった。 

 

クリストファー・ノーランの嘘  思想で読む映画論

クリストファー・ノーランの嘘 思想で読む映画論

 

 

世界の美しい犬101

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「世界の美しい犬101」レイチェル・ヘイル・マッケナ 著(パイインターナショナル)

世界の犬101を魅力的にとらえた、ビジュアル犬図鑑の決定版。

ブルドック、ヨークシャテリア、アフガンハウンド等、さまざまな種類の犬101匹を、全世界で大人気の写真家、レイチェル・ヘイルの写真で紹介します。写真とあわせて、各犬種の特徴も掲載。図鑑としてもお楽しみいただけます。プレゼントにも最適な1冊です。

パイインターナショナルの選書をしていた愛犬家の書店員が思わず手を止めて見入ってしまったのがこの本。主人公の存在感が際立っています。

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漫画『ピーナッツ』の主役、ビーグル犬のスヌーピーが代表するように、犬は偉大な役者であり、哲学者でもあります。そんな犬の魅力を引き出した写真集がこの本ではないでしょうか。

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 ポメラニアン、パグ、パピヨン、それともプードル・・・愛くるしくてほれぼれする犬たちが勢揃いした、ビジュアル犬図鑑の決定版です。 

世界の美しい犬101

世界の美しい犬101

  • 作者: レイチェル・ヘイル・マッケナ
  • 出版社/メーカー: パイインターナショナル
  • 発売日: 2016/12/09
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

パイインターナショナルが今年で創立30周年

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写真・建築・アート・デザイン・実用とアートファンにはなじみ深い出版社・パイインターナショナルが今年で創立30周年を迎えたそうです。それを記念して神田・神保町の東京堂書展ではフェアを開催中とのこと。売れ筋を観に行くことにしましょう。

者名のPIEの意味が気になっていたのですが、同社サイトにその由来が描いてありました。ブランドネームには様々な意味が凝縮されていることがわかります。 

PIE=円・丸い→地球→世界。
 パイ=おかあさんが作ってくれる食べ物→家庭的で親しみがある。
 パイ=いろいろなものがミックスされている…という意味があります。
 世界のさまざまなデザイン・アート・文化を世界に紹介したい、届けたい。
 新鮮で、やさしく可愛らしい、親しみのある書籍づくりをめざしたい…
 という思いをこめたブランドネームです。
 キャッチコピー:Sweet & Fresh PIE
 コンセプト:
 PIE=Pretty(かわいい) Impressive(感動的な) Entertaining(楽しい)

芸術関連書籍は人気のジャンルのため、在庫の補充には気を遣います。同社刊行物から夏のお奨めを探してみました。

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「カレー地獄旅行」ひげラク商店 著(パイインターナショナル)

きっと残さず食べたくなる。コワくて笑える激辛食育絵本。

みちひと君はカレーが大好き。でも野菜は捨てちゃえと手を伸ばすと、なんとカレーの中に吸い込まれてしまいます! 気がつくと、怖い顔をしたエンマさまによる「さばき」が始まり……。真っ赤な鉄鍋地獄にギョッ、くすぐり茄子の刑で泣き笑い、ルーの滝修行で大反省。はたしてみちひとくんは無事におうちに帰れるのでしょうか。飲食店の看板制作で培った迫力あるイラストによる、おそろしくもどこか愉快な「地獄」の世界。読んだ後にはきっと、おうちのカレーを残さず食べたくなる絵本です。巻頭と巻末にはそれぞれ「カレー地獄温泉郷MAP」と「カレー地獄商店街おみやげ案内」を掲載。地獄のスパイスをすみずみまでお楽しみください。対象年齢3歳ぐらいから。

カレー本はこの夏のヒットテーマです。夏休み、子どもの食育という隠しテーマも込められた本は子育て世代に受けそうな気がします。 

 

東芝大裏面史ほか

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大企業の内幕ものは企業の本質を押さえる上で大変参考になります。出版各社もこの分野に力を入れていて、パナソニックやシャープ、住友銀行などヒットを連打しています。大企業をテーマとした書籍はこれまで数々出版されてきましたが、経営書・ビジネス書の視点で書かれた作品は一般性に乏しくともすれば提灯記事のようなものも少なくありませんでした。内幕ものは企業のあり方を通じて人間の生き方やこの社会の行く末といった深いテーマが柱としてあるので、多くの人の関心を呼ぶのかも知れません。

書店としても同名の書籍が揃うとインパクトがあります。教養書としてまとめ買いしていく放送局員も散見されます。

東芝 大裏面史」FACTA編集部(文藝春秋

 経済産業省原子力発電を輸出することによって国を繁栄させる「原発ルネッサンス」という政策を省是とした。東芝は、その大きな政策の流れの中、米国の原子力大手、ウェスチングハウス三菱重工業が提示した額を遙かに上回る54億ドルで買収する。しかし、3・11の福島原発事故で、東芝が作った3号機もメルトダウン。それを機に原発事業は先進国のみならず、新興国でも存亡の淵に立たされる。すでに死んでいるはずの東芝が、まだ生き長らえているのはなぜか?そこには、日本の核燃料サイクルを維持させるための経産省の深謀があった。東芝幹部が回し読みしていたという会員制情報誌による徹底調査!

 

東芝 大裏面史

東芝 大裏面史

 

 

東芝 原子力敗戦」大西康之 著(文藝春秋

二〇〇六年、米原発メーカー・ウエスチングハウス買収をきっかけに、解体の危機へと追い込まれた東芝経産省の思惑、国策にすがる幹部、暴走する原子力事業部員の姿を、社内極秘資料を元にあますところなく描く。『日経ビジネス』在籍時代からスクープを連発した、第一人者によるノンフィクション決定版。 

東芝 原子力敗戦

東芝 原子力敗戦

 

 

 東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」松崎隆司 著(宝島社) 

大企業は嘘をつく!失敗の全内幕を明かす。離反する監査法人、隠ぺい体質、派閥意識、不正会計の闇、原発の罠。切り売りされる6兆円企業―。奈落の底に落とした戦犯たちを炙り出す!

第1章 浮上する粉飾決算疑惑
第2章 戦前から東芝を支配する派閥意識
第3章 深すぎる不正会計の闇
第4章 隠ぺい体質の根幹
第5章 虚飾まみれの第三者委員会
第6章 「東芝解体」までの道のり
第7章 米国の罠にはまったウェスチングハウス買収
第8章 離反する監査法人
第9章 消滅する総合家電メーカー

 

東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人

東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人

 

 

あるかしら書店

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「あるかしら書店」ヨシタケ シンスケ*1ポプラ社

 この本屋さんでは、「あったらいいな」という本や夢いっぱいのグッズが、次から次へと飛び出します。月明かりの下でしか読めない「月光本」、読書に付き合ってくれる「読書サポートロボ」、ふたつの本を合わせて初めて読むことができる「2人で読む本」などなど、読んだらきっと「本ってやっぱりいいよねぇ」と言いたくなってしまうエピソードが満載。大人気の絵本作家ヨシタケシンスケさんの豊かな発想力がめいっぱい詰まった、ますます本が好きになってしまう一冊です。

購買層の関係から学参本と絵本は取り扱っていませんが、こどもの本の動きは気になります。電子デバイスが普及しても、スマホを自由自在に使いこなせる就学児童はいないからです。

ですから、ドラえもんを軸とした売り上げをほこるコロコロコミックは、劇的に売り上げを落とすことはなく、小学館の業績安定に寄与していることもよくわかります。

「子どもに読み聞かせる気持ちでページをめくったら大人の心にも響いてしまった」という売り方は、ずるいようですが正しい方法なのかも知れません。本屋の思いを形にしたのがこの本です。

あるかしら書店

あるかしら書店

 

http://www.osoraku.com/

 

*1:1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に、『しかもフタが無い』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(以上、講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)などがある。2児の父。

石原豪人: 「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター

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石原豪人: 「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター」中村圭子 編(河出書房新社

昭和40年代、少年雑誌の「大図解」で大活躍!!伝説のイラストレータ石原豪人の全軌跡。力・毒・色気あふれる―50年に及ぶ画業が初めて1冊に!

ひと昔前、児童文学の棚に並んでいた本の中に、空想科学やオカルトをテーマにしたものがありました。いわば、キワモノ児童書です。

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それらの本のイラストを数多く手がけたのが石原豪人です。

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戦記物やメカや未来を小松崎茂はそれなりの評価を得て復刻を果たしましたが、怪物や色気のある妖怪を描いた石原にはなかなか光が当たりませんでした。

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挿絵、イラスト、付録等、従来の美術館が扱わなかった題材をとりあげた展覧会企画してきた弥生美術館学芸員中村圭子さんが石原義人に注目。編集した本が発行されました。

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石原豪人(「ごうじん」:1923年3月15日-1998年6月19日)の本名は石原徹。島根県出身で、日本大学芸術学部中退です。18歳で満州に渡り、映画看板などを描いていましたが、体調を崩したため、1955年頃(昭和30年)から比較的体力を使わなくて済む挿絵画家としての仕事を始め、以後40年間にわたって精力的に描き続けました。

筑波嶺夜想曲 石原豪人-「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター:少年時代の記憶に息づく作品達

 

 

 

つるとはな5号

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「つるとはな5号」つるとはな編集部

「年上の先輩に話を聞く小さな場所」をテーマにした編集が人気の不定季刊誌です。骨太できめ細かい編集にファンが定着しています。高齢者の方に話を聞く機会が少なくなったいまだからこそ価値のある本です。世の中に埋もれ朽ち果てようとしている人生の達人を捜し当て、長話になりがちなインタビューを達人の技で編集した読みやすさが人気を支えています。

 

つるとはな第5号

つるとはな第5号