本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

UFO事件クロニクル

パズルを解くように接するのがUFO事件の楽しみです・・・という本。

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「UFO事件クロニクル」ASIOS 著(彩図社

1947年6月、実業家のケネス・アーノルドがアメリカ西海岸のワシントン州を自家用機で飛行中、レーニア山付近で超高速で飛行する謎の物体を目撃する―これがすべての始まりだった。
この日以降、世界中の空で未確認飛行物体が目撃され、従来の常識では説明できないような数々の〝怪事件〟が巻き起こるようになる。
首都ワシントンの上空を複数の未確認飛行物体が襲った「ワシントンUFO侵略事件」、大勢の人々がUFOとその乗員を目撃した「ギル神父事件」、森林作業員がUFOのさらわれた「トラビス・ウォルトン事件」、日本の貨物機がUFOと遭遇「日航ジャンボ機UFO遭遇事件」…。
なぜUFOは現れるのか。
その謎を解くべく、UFO史に名を残す難事件の真相をASIOSが解説。
UFO人物辞典や用語集、UFO事件年表など、付随する情報も網羅。
この一冊を読めば、UFOの謎と歴史がよくわかる。UFOファン必携の書。

「発明とは、それまで見つからなかったものを見つけたことを言う」のだそうです。

人間はそれまで見つかったことからしか物事が認知できないからです。超常現象とはその境目でおきる出来事です。空に光るものを見つけるとUFOが頭に浮かびます。中には誰かがいたずらしたトリックがあるかも知れませんが、トリックが見破れないときUFOは信憑性を持ち始めます。

取材で走り回る放送局員は不思議とUFOらしき現象を見ても騒ぎません。撮影した画面に「らしき映像」が写っていたとしてもあわてません。らしき映像が商品にならないからです。らしき映像を商品化することを考えたときらしき映像はUFOに姿を変えます。ネットで頻発する炎上商法に通じる、人間の持つ性かもしれません。

ASIOS(アシオス)は、2007年に発足した超常現象の懐疑的な調査を目的に活動する 日本の団体です。「UFO?マジ、トリックだろう」と鼻から信じない人たちかせ、手品の謎解きをするように検証していく本は、物事をナナメから見る放送局員にとって非常になじむ本といえます。

 

週間ベスト10 2017.09.05

ランキングです。

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東京堂書店神田神保町店2017/9/5調べの週間ベストセラーです。

 

1「古典名作本の雑誌 別冊本の雑誌 ; 19」(本の雑誌社) 

読書の王道。一家に一冊永久保存版!

新刊・エンタメが中心だった「本の雑誌」が、ついに読書の王道に挑む?! 創刊42年、四十にして惑わずということで、読んだフリをしてきた(であろう)古典名作と真正面から向き合う別冊を刊行!

海外は、イギリス、フランス、ドイツなど国やエリア別に、国内は中古、中世、近世、明治など時代ごとに、そしてエンターテイメントは、ミステリ(国内/海外)、SF(国内/海外)、ノンフィクションなど25のジャンルにわけ、強力な評者の元、それぞれ約古典名作を20作ずつ紹介! 年表や座談会など読み物ページも充実。10代の若者から死ぬまでの読んでおきたいと読書回顧の人々まで、永遠不朽のブックガイドが誕生!

 

2「蔵書一代 : なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか」紀田順一郎*1 著(松籟社

やむをえない事情から3万冊超の蔵書を手放した著者。自らの半身をもぎとられたような痛恨の蔵書処分を契機に、「蔵書とは何か」という命題に改めて取り組んだ。近代日本の出版史・読書文化を振り返りながら、「蔵書」の意義と可能性、その限界を探る。

3「すごいトシヨリBOOK : トシをとると楽しみがふえる」池内紀*2 著(毎日新聞出版

人生の楽しみは70歳からの「下り坂」にあり。ドイツ文学者の楽しく老いる極意。リタイア後を豊かに生きるヒント。

4「埴原一亟古本小説集」埴原一亟 著(夏葉社)

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natsuhasha.com

 

5「この世の春 1」宮部みゆき 著(新潮社)

それは死者たちの声?それとも心の扉が開く音?小説史に類を見ない息を呑む大仕掛け。21世紀最強のサイコ&ミステリー長編小説。

6「この世の春 2」宮部みゆき 著(新潮社)

7「売春島 「最後の桃源郷渡鹿野島ルポ」高木瑞穂*3 著(彩図社

“売春島"。
三重県志摩市東部の入り組んだ的矢湾に浮かぶ、人口わずか200人ほどの離島、周囲約7キロの小さな渡鹿野島を、人はそう呼ぶ。

4travel.jp


島内のあちこちに置屋が立ち並び、島民全ての生活が売春で成り立っているとされる、現代ニッポンの桃源郷だ。
この島にはまことしやかに囁かれるさまざまな噂がある。
「警察や取材者を遠ざけるため客は、みな監視されている」
「写真を取ることも許されない」
「島から泳いで逃げようとした売春婦がいる」
「内偵調査に訪れた警察官が、懐柔されて置屋のマスターになった」
「売春の実態を調べていた女性ライターが失踪した」
しかし、時代の流れに取り残されたこの島は現在疲弊し、凋落の一途を辿っている。
本書ではルポライターの著者が、島の歴史から売春産業の成り立ち、隆盛、そして衰退までを執念の取材によって解き明かしていく。
伝説の売春島はどのようにして生まれ、どのような歴史を歩んできたのか?
人身売買ブローカー、置屋経営者、売春婦、行政関係者などの当事者から伝説の真実が明かされる!

8「日本のテロ : 爆弾の時代60s−70s」栗原康*4 著(河出書房新社

爆弾闘争、内ゲバ、革命運動―あの時代の若者たちはなぜ過激な行動に向かったのか?政治と暴力と文学から考える。時代を知るためのブックガイド併録。

9「パルチザン伝説」 桐山襲*5 著(河出書房新社

アジアの犠牲の上に成り立つ平和と繁栄を破壊するため、僕と仲間たちはその象徴たる天皇の暗殺を企てたが、失敗に終わる。代わりに経済侵略の急先鋒だったM企業を爆破するが、その後の路線対立で僕はグループから離脱。ひとり爆弾闘争を続ける中で片手片目を失い、地下に潜行することに。沖縄の離島へ流れ着いた僕は、逃亡生活の直前に母から受け継いだ一通の手記から、謎の失踪を遂げた父の驚くべき来歴を知るのだが…。繋がっていく戦時中の父と、戦後を生きる自身の姿、そして浮かび上がる日本という国家のかたち―文学的想像力の奇蹟的な到達点を示す伝説の作品、ついに刊行!

10「もはや宇宙は迷宮の鏡のように」 荒巻義雄*6 著(彩流社

満84歳の新作書き下ろし。バニヤン著『天路歴程』、ダンテ著『神曲物語』を嗣ぐ、日本初長編書き下ろし死後文学。

*1:1935年横浜市に生まれる。慶應義塾大学経済学部卒業。書誌学、メディア論を専門とし、評論活動を行うほか、創作も手がける。『幻想と怪奇の時代』(松籟社)により、2008年度日本推理作家協会賞および神奈川文化賞(文学)を受賞

*2:1940年兵庫県姫路市生まれ。ドイツ文学者・エッセイスト。主な著書に『ゲーテさんこんばんは』(桑原武夫学芸賞)、『海山のあいだ』(講談社エッセイ賞)、『二列目の人生』、『恩地孝四郎』(読売文学賞)、『亡き人へのレクイエム』など

*3:ルポライター。風俗専門誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に「サラリーマンより稼ぐ女子高生たち〜JKビジネスのすべて」(コアマガジン)、「風俗開業経営マニュアル〜極秘公開」

*4:1979年生まれ。政治学。2017年、池田晶子記念「わたくし、つまりNobody賞」を受賞

*5:1949年、東京都生まれ。83年「パルチザン伝説」でデビュー。92年、没

*6:1933年小樽市生まれ。早稲田大学で心理学、北海学園大学で土木・建築学を修める。日本SFの第一世代の主力作家の一人

すごいトシヨリBOOK トシをとると楽しみがふえる

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敬老月間を前にして、シニア世代の本が続々登場しています。売れ筋筆頭がドイツ文学者・エッセイストの池内紀さんの本です。

本が売れない要因の一つに若い世代の活字離れ。というか・・印刷媒体離れがあることは最近の統計でも明らかになりました。当店でも影響は雑誌類の売れ行きに顕著に見られます。女性向けファッション誌が辛い。書店にとってかすかな望みがシニア層だと思います。「ヤケクソが籠っています」と作家の佐藤愛子さんが書かれたエッセイ「九十歳。何がめでたい」が売れたのも、共感するシニア層がいたからこそ。出版各社がシニア層を狙うのには意味があるのです。

 

「すごいトシヨリBOOK トシをとると楽しみがふえる」池内紀 著(PHP研究所

ドイツ文学者・池内紀の語り下ろし。老いに抵抗するのではなく、老いを受け入れて、自分らしく楽しくトシをとろう。そう決めた著者は、70歳になったとき、「すごいトシヨリBOOK」と銘打ったノートに、老いていく自分の観察記録をつけはじめた。もの忘れがふえたり、身体が不調になってきたり、そんな自分と向き合いながら著者は、老人の行動をチェックするための「老化早見表」なるものを考案したり、「OTKJ」(お金をつかわないで暮らす術)といった独創的な節約システムを生み出すなど、楽しく老いる知恵と工夫を日々研鑽している。「心はフケていないと思うこと自体がフケている印」「心がフケたからこそ、若い時とは違う命の局面がみえてくる」。名エッセイストによる、ほがらかに老いを楽しむノウハウがつまった画期的な本

65歳以上の高齢層がこれからの消費を引っ張っていくのだそうです。高齢者向けの商品というと、わずかな年金と介護や健康といった固定観念を持ちがちです。ところがどの世代よりシニアの購買意欲は高いと言い切る本が頭に浮かびました。

この本の著者によると、特に70代の女性の消費意欲が顕著なのだそうです。子育てを終え健康を保った女性たちはこれまでのシニアとは違ったイメージを持っています。自己研鑽に向ける気力も十分。加えて社会的なストレスも全世代でいちばん低いことから消費にもおおらかで、年寄りだとあなどれないパワーがあるのだそうです。

説得力ある統計データを眺めがら、池内さんのエッセイを読むと高齢者の暮らしは貧困の一言でくくりきれない多様性があることがわかります。

レビウス

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「レビウス」中田春彌 著(小学館

新生暦19世紀――戦後の帝都では、人体と機械を融合させて戦う「機関拳闘」という格闘技が行われていた。
戦争で父親を失い、母親も意識が戻らない状態となった孤独な少年、レビウス=クロムウェルは、彼を引きとった伯父ザックのもとで、機関拳闘の若き闘士として頭角を現し始める。
そんなある日、競技の最高峰であるGrade-1に挑戦する機会が、レビウスに訪れる。同級1位のヒューゴとの特別試合に勝つことが条件だったが、そのヒューゴが前哨戦の相手、A.J.という謎の選手との戦いで…!!
人間の尊厳と、文明の未来が火花を散らす、頂上バトル、ここに始まる。

バンドデシネ*1とは、フランス語圏(ベルギーなど)のマンガを指します。メビウスエンキ・ビラル、ニコラ・ド・クレシーなどが日本でもよく知られています。繊細な描線や計算された構図、独特な色彩など、西洋美術のエッセンスを詰め込んだバンドデシネは見る文学作品のようなものかもしれません。

『強き者。美しき者。その名は――レビウス』とはメビウスのオマージュなのでしょうか。

出版化を待っていたコアな読者も多いようです。放送局の中では安定して売れそうな感触の本です。 

 

*1:「bande dessinée」の名前は、「描かれた帯」という意味のフランス語に基づく。意訳すれば「続き漫画」

少女終末旅行

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少女終末旅行」つくみず 著(新潮社)

文明が崩壊した終末世界。愛車のケッテンクラートで廃墟をあてもなく旅するチトとユーリの日常を描く、ほのぼのディストピア・ストーリー

自分のブームをつくり、それが世の中のブームになるまで語り続けるうちに、世の中が追いかけるように面白がり始める。みうらじゅん氏が「ない仕事の作り方」で言っていました。

私が名づけたブームのほとんどの名称は、水と油、もしくは全く関係がないものを結びつけるようにしています。(中略)A+B=ABでなく、A+B=Cになるようにするのです。そしてAかBかのどちらかは、もう一方を打ち消すようなネガティブなものにします。この「ゆるキャラ」は、その最たる例と言えるでしょう。

「誰も見向きもしないことを面白がり、”面白い面白い”と言い続けることがヒットの秘密だ」というのなら、意外に伸びるかもしれないのがこの本です。http://www.kurage-bunch.com/manga/shojoshumatsu/01/img/1.jpg

本書はWEB漫画サイト「くらげバンチ」で連載中の漫画を出版化したものです。

コミックバンチはかつて新潮社が発行していた青年コミック誌です。

終末世界に取り残された二人の少女がケッテンクラート*1に乗って宛もない旅を続ける物語。

どこか「BLAME!(ブラム)」や「キノの旅」的な脱力した世界観を感じます。

萌えの要素があるようで微妙。ミリオタ御用達のようでいてこれも微妙な作品。

このどこかほのぼのとしたディストピア世界には危険な香りが漂っています。

明日が見えない舞台設定の中でなんとなく続く日常世界。もがかない。苦しまない。しかし前に向かって歩き続ける主人公たち。

この作品は何を訴えたいのかと読み進めるうちに、自分たちもその世界の住人になってしまっているのに気づくからです。

鉛筆で描かれたデッサンのような作風は、今流の緻密でリアルな描写から見ると隙きだらけのように見えます。話のオチがないところはギリギリ同人誌レベルといってもいいかもしれません。

しかし次のページをめくりたくなります。

描かれていることのうち半分以上を読者の想像にまかす作品です。

アニメーション制作者たちを刺激してやまないだろうと思っていたら案の定。10月のテレビアニメシリーズとして放送が決まったようです。

実写ドラマでどこまで撮れるか。企画のネタ本にと、店頭に目立つよう並べることにしましょう。

twitter.com

girls-last-tour.com

 

 

*1:第二次世界大戦期にドイツで開発された半装軌車

ムー公式 実践・超日常英会話

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「ムー公式 実践・超日常英会話」宇佐和通 著、石原 まこちん (イラスト) (学研プラス)

ありそうでなかった英会話の本。超常現象専門誌「ムー」を発行する「学研」だけができる、英会話の本。UFO、幽霊、陰謀、滅亡・・・・ 備えあれば憂いなし。ムーが贈る超日常英会話を読んでおけば、なにが起きても大丈夫。世界のミステリースポットであなたを救う。

たとえばこんなシチュエーションで、あなたはどう切り抜ける?

https://m.media-amazon.com/images/S/aplus-media/sota/5690cbb4-47c4-4e16-9606-b355b8aa8518._SL220__.png

When you bend spoons, put them back the way they were!
スプーンを曲げたら、ちゃんと元に戻しておきなさい!

 

https://m.media-amazon.com/images/S/aplus-media/sota/0fe2381c-26eb-4b30-96b9-97ff88ac4388._SL220__.png

I need to get another room because I'm seeing a ghost in here.
幽霊が出るので、部屋を変えてください。

突如書店の入り口正面に出現した謎の英会話テキスト。

書店員によると、世の中では売れはじめているのであわてて仕入れた本なのだそうです。一応スキット*1らしきものがありますが、よく見ると普通の生活で使うような例文ではありません。

表紙は一見、語学テキストのようなおとなしいデザインです。奇妙に思えるのが"超"日常英会話と描いてある表題です。日常を超えた"非日常"英会話ということなのでしょうか。決定的なのは文字の背景に描かれた「ムー」というロゴです。ムーといえば伝説上の大陸、もしくはそこに存在したとされるムー帝国。書店の常識で言えば月刊オカルト情報誌ではないですか。

限りなくフェイクに近いオカルト系の情報は、事実を扱う放送局にとって真に受けてはならないものです。その本をこの書店が堂々と扱っていいのかという気になります。

書店員によると「この本は超常現象に遭遇したときに使える英会話のテキスト」なのだそうです。超常現象の検証はともかく、英会話テキストとして間違っていない限り問題はないはずと言います。

現実にはあり得ない状況下でしか役に立たない英会話テキストなので、正規のテキスト本コーナーに並べると間違いの元になる。かといって”トンデモ本”という分類にもあてはまらない。だったら堂々と正面に置こうと判断したのだそうです。

世の中は何が起こっても誰も驚かない時代になっています。そんな時代だからこそ謎の英会話テキストに人気が集まっても不思議ではないのでしょう。

 

*1:skit は「寸劇」のこと。通常会話の実例を示すために演じられる。単語の起源は不明。

9月の「このマンガがすごい!」ランキング オンナ編

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宝島社「このマンガがすごい!」編集部が運営するマンガ情報サイト『このマンガがすごい!WEB』。選者が選んだ9月のランキングが発表されました。

 

1「ポーの一族 ~春の夢~」萩尾望都 著(小学館

2「うたかたダイアログ」稲井カオル 著(白泉社

3「サトコとナダ」ユペチカ 著、西森マリー 監 (講談社

4「淡島百景志村貴子 著(太田出版

5「こうふく画報」長田佳奈 著(ぶんか社

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6「おはよう、いばら姫」森野萌 著(講談社

6「君曜日 鉄道少女漫画中村明日美子 著(白泉社

8「闇の末裔松下容子 著(白泉社

9「ショートケーキケーキ」森下suu 著(集英社

9「バーナム効果であるあるがある」川原泉 著(白泉社