本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

ジャーナリストの栄養源

頭を働かせるためにはしっかりしたものを摂取することが肝心です。

放送局における書店の立ち位置は社員食堂に近いようです。時代を読み解くためには、事象を正確に報道するだけではなくその裏側にある本質をしっかりつかまえることが求められます。

右といわれたら「はいそうですか」というのでは失格です。すべての方角を見て視聴者の判断に資する情報をすみやかに提供しなくてはならないのです。

では、信頼にたり得る情報はどこにあるかというと、それは「人」にあります。本屋ができることはおびただしい新刊本の中から、これはという本を探し出して平積みすることしかありません。政治や国際、社会の棚の充実は本屋にとっても見識が問われる場なのです。 

国際関係の平台に並んだ中から6冊ご紹介します。

  • 「脱文明のユートピアを求めて」リチャード・T・ シェーファー、ウィリアム・W・ ゼルナー著(筑摩書房)・・アメリカ文明に背を向けた、10の宗教集団のフィールドワークの傑作。その精神世界と脱文明のライフスタイルとは何か。精神世界に癒しを求める病めるアメリカ。その深層と断面に鋭く切り込んだ宗教社会学・マイノリティ社会学の名著。全米数百の大学でテキスト採用。
  • 「沈まぬアメリカ―拡散するソフト・パワーとその真価―」渡辺靖著(新潮社)・・願望まじりの「衰退論」とは裏腹に、いまだ世界はアメリカの魅力と呪縛から逃れられない。中国や中東へ積極的に進出する大学やウォルマート、アフリカのメガチャーチ……こうしたアメリカの「文化的遺産」が、政治・教育・宗教などあらゆる分野で世界中に拡散、浸透している。アメリカ研究の第一人者が現場を歩き、その影響を考察する意欲的論考。
  • グアンタナモ収容所 地獄からの手記」モハメドゥ・ウルド スラヒ著(河出書房新社)・・罪状不明のまま今も米国政府に収監されている著者が経験した、拷問と虐待の日々…黒く塗りつぶされた検閲を乗り越えて今ここにある手記は、国家と人間について何を語るのか?20カ国で刊行され、世界中が震撼した衝撃の書!
  • 「狙撃兵 ローザ・シャニーナ――ナチスと戦った女性兵士」秋元健治著(現代書館)・・第二次世界大戦の欧州東部戦線に多数投入されたソ連女性兵士たち。その中に20歳になったばかりの天才狙撃兵がいた。実在のソ連陸軍女性狙撃兵ローザ・シャニーナの生涯を描く。
  • 「諜報の現代史: 政治行動としての情報戦争」植田樹著(彩流社)・・諜報とは情報の戦争である。国家の存亡を賭けた常なる見えざる戦いである。そして、サイバー戦争は始まっている。潜入スパイからサイバー戦争まで!諜報や情報活動を国際政治や政治権力との関わりの中で洗い出し、国益がぶつかり合う攻防の暗闘の陰の世界に光をあてる。
  • 「国家と治安 -アメリカ治安法制と自由の歴史」木下ちがや著(青土社)・・進行しつづける国家と社会の再編のなかで、何が規制され、いかなる秩序が形成されてきたのか。秘密保護法やヘイトスピーチ規制にまでつながる、普遍かつ重要な問題をあきらかにする、気鋭による画期の書。