本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

トップ10は書評だけでも目を通す

今週の日経新聞ベストセラー(12月20日)はビジネス書がランキングされていました。新聞に掲載された本の書評を読むのは、安上がりな読書術です。

f:id:tanazashi:20151230150345g:plain

 

放送局の書店にビジネス書は見当たりません。会社経営の方法や、優良株の見分け方などの金儲けの世界は、制作者が苦手とする分野です。番組にしろと言われてもイメージがわいてこないテーマだといえます。

「超絶スゴ技」の方法で会社経営バトルを企画してもパッとしないでしょうし、「テレビショッピング」の商品を株に置き換えてもつまりません。ビジネス書の世界はお金が絡むので誤って伝えると損害につながます。「下町ロケット」のように企業経営のエピソードはストーリーの味付けとししてしか使い道が見当たらないのです。

ビジネス書、経営書はいわばビジネスマン向けの自己啓発書であり教科書のようなものです。料理にたとえるなら下ごしらえに手間がかかる素材のような物です。すぐに番組かできるようなものではないからだとも思います。

しかし根気よく探せば、時折キラリと光るテーマやヒントが見つかることもあります。流れを読みながら観察し続ける忍耐や努力も必要なのかもしれません。

  1. 「嫌われる勇気」岸見 一郎、古賀 史健著(ダイヤモンド社
  2. 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」岩崎 夏海著(ダイヤモンド社
  3. 会社四季報 業界地図」2016年版 東洋経済新報社変(東洋経済新報社
  4. 「超一流の雑談力」安田 正著(文響社)
  5. 「会社のITはエンジニアに任せるな!」白川 克著(ダイヤモンド社
  6. 「改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学」ロバート・キヨサキ著(筑摩書房)
  7. 「大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる」井堀 利宏著(KADOKAWA)
  8. ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学」入山 章栄著(日系BP社)
  9. 「あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか」津田 久資著(ダイヤモンド社
  10. 「人はなぜ、宗教にハマるのか?」苫米地 英人著(フォレスト出版

1.アマゾンベストセラー一位の本です。アルフレッド・アドラー(1830-1937)が提唱したアドラー心理学を、日本アドラー心理学会顧問で、アドラーの著作も多数翻訳している岸見一郎氏が解き明かした「自己啓発の原点」ともいえる内容のようです。「他人に好かれようが嫌われようが、それは他人が決めることである。自分自身が選ぶライフスタイルに勇気を持て」というポジティブ感は、人間関係に落ち込んだときに読んでみたい気になります。

2.「もしドラ」の岩崎夏海氏の続刊。「競争社会で生き残るために競争をしない」というのは魅力的な言い回しです。社会的な動物である人間は社会の中で生きていくためには、その人が認められる「居場所」が必要です。適切な居場所を作るためには健全に働く組織がないといけません。その組織を運営するヒントが軸になった青春小説です。

3.「仕事も人間関係も、すべてはコミュニケーションから始まるのに、「雑談」を大事にしている人が少ない。これは、とてももったいないことだと思う」。雑談を三つに分類して質の高い雑談をするにはどうしたらいいか考える、ハウツー本になるのでしょうか。

4.株をやっている人は必見ですが・・・

5.「ITのエンジニアじゃない普通の人も、ITとお付き合いしなければ仕事にならない世の中になりました。でも、よく分からないし、エンジニアの話は理解できないし、できることなら関わりたくない。そういうビジネスパーソン向け」と宣伝文にあるように、技術の世界は門外漢には理解できない常識ばかり。これは放送でも同じです。放送局には放送技術、制作技術、情報システムなど多くの人材がコンテンツの制作に携わっています。異なる集団をまとめるために何が必要か、興味ある本です。

6.「ファイナンシャル・リテラシーを身につけることが、豊かな人生を生きてゆくために欠かせない」と趣旨が述べられています。生き残るすべを学ぶ上で示唆に富んだ本といえなくもありませんが、小さな違和感も感じます。

7.「ニュースをよく理解する為に必要な経済知識を噛み砕いて書いた本である」とあります。必要に迫られたとき手に取ってみる本のようです。

8.「世界の経営学のエッセンスを圧倒的に分かりやすく解説」放送局員にとってやや縁遠いジャンルの指南書です。

9.本書も一種の自己啓発本なのでしょう。東大卒というのは肩書きであるとともに、有段者ではないかと私は思います。一流のアスリートが日々の鍛錬を繰り返してその座をつかむように、学ぶという苦行を耐え抜いてきた証を有段者は持っています。本当にすごいと思うのは「頭がいい人」ではなく「頭の強い人」です。本を読む以上に、「頭の強い人」と交流を持つことの方が自分を変える力になるように思えます。

10.「宗教」においては、本来、自分の宗教の信者以外は「人」ではないからです。これが原理主義者の論理です。この論理は大変乱暴に聞こえます。ただ、これが少なくとも仏教以外の宗教では、本来の論理であることを理解しておかないと、国際社会で起きている出来事の因果を見誤るリスクがあります。(解説文)

・・・解説文はなるほどです。類書ですが、佐藤優氏の著作を読むと、宗教に関する教養を広く身につけることが、国際化する社会でどれほど大切かが理解できます。