本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

浴びるようにコミックスが読みたい

放送局の書店に見当たらないときは、近くの大型書店に行って探します。

ファッションやアート、クリエイティブ系の書籍は近くのパルコブックセンターには遠く及びません。この書店には尖った読者がついているためコミックスも充実しています。

 

平台には個性的な本が競い合い、時折思いもよらぬ本を発見することもあります。話題となったコミックスが番組や映画化される確率は極めて高いので目が離せません。

そんなタイトルを見分けるときに頼りになるのが、毎年この時期に発行される「このマンガがすごい」(宝島社)です。

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  1. 「ダンジョン飯」九井 諒子著(KADOKAWA)
  2. 「ゴールデンカムイ」野田 サトル著(集英社
  3. 「黒博物館 ゴースト アンド レディ」藤田 和日郎著(講談社
  4. 「恋は雨上がりのように」眉月 じゅん著
  5. 「僕のヒーローアカデミア」堀越 耕平著(集英社
  6. 「波よ聞いてくれ」沙村 広明著(講談社
  7. 「はたらく細胞」清水 茜著(講談社
  8. 「岡崎に捧ぐ」山本 さほ著(小学館
  9. 「だがしかし」コトヤマ(小学館
  10. 僕だけがいない街」三部 けい著(KADOKAWA)

リアルタイムでテレビを見ない人が増えています。放送関係者としてはかなり気になる事態なのですが、クリエイターの層や作品の質は広く深くなっているような気がします。もはやコミックスがその対象としないテーマはなく、いまや世代、性別を問わずあらゆる世代に浸透するまでになりました。

ところが放送局の態度を見ると微妙な温度差を感じます、コミックスはまだまだサブカルチャーであり、若年層向けのコンテンツであるという意識です。二次元のメディアであるからという理由もあるかもしれませんが、文学の扱われ方と比較してみるとその差は歴然としています。

しかし、アニメを中心としたコンテンツが海外で注目され、夏・冬のコミケが社会現象(年中行事という意味で)となるに従い、文化として注目される機会は増えています。

若い番組制作者の中にはコミックスやアニメを当たり前のように受け入れる人たちが現れ始めています。

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この秋、NHK・Eテレで放送された「漫勉」は、そんな予感を感じさせる番組でした。漫画家が漫画家の制作風景に密着して、創作の動機や考え方、技術論を交わし合うという内容です。普段入ることのできないアトリエの風景や作家によって微妙に異なる作業工程、プロの目線で見る同業者の仕事の苦労など、門外漢でもその世界の厳しさが伝わる贅沢なつくりでした。

「漫画家が、白い紙にドラマを描き出す手法は、これまで門外不出のものだった。さらに漫画には、決められた手法はなく、漫画家それぞれがまったく違うやり方を、独自に生み出していると言う。この番組は、普段は立ち入ることができない漫画家たちの仕事場に密着。最新の機材を用いて、「マンガ誕生」の瞬間をドキュメントする」

漫勉は3本シリーズ(第二シリーズは春オンエア)でした。クリエイターを目指す人にはたまらない番組だったと思います。創作風景のドキュメントはテレビ番組でしか描けない発見もありました。

ポイントは「下絵を消すシーン」です。プロの筆さばきの超絶さは、プロスポーツを観戦するようなスリルがあります。その裏側にある苦悩が下絵を前にした場面に現れているのです。このことに気づいた制作者はエライと思います。

秋の特集は翌年の定時番組を決める上で予行演習の役割を果たします。テレビを見てコミックスを読むとコミックスの世界観がぐっと身近なものになります。二つの接点がもたらすメディアの活性化を期待したいと思います。

追伸:「東村アキコさん」の回担当は音響企画さんのようです。

いよいよ本日から放送開始です!浦沢直樹の漫勉「東村アキコ」ぜひご覧ください! - 株式会社 音響企画 onkyo-kikaku Co.,Ltd | Facebook

追伸:HAFF POST誌で浦沢さんは企画に乗った意図をこう語っていました。

「浦沢:あの番組はNHKEテレで放映されたじゃないですか。NHKが撮った映像は、実は国民の所有物、財産で、貸し出しがされるっていう大前提があるらしいです。何しろ受信料をみんなで払ってますから。だから、NHKで撮った時点で、すでに国民の所有物としてのアーカイブになっているみたいですよ」映像は記録として保存されるのです。