本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

決して他人事ではない「貧困」問題 

放送番組は刹那的です。しかし、見えない社会のひずみを可視化する力があります。

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「鳥の目と蟻の目で見よ」と先輩たちから口伝えで番組制作の「心得」と「志」を学び受け継いできました。*1

  •  「AERAの1000冊」AERA MOOK編(朝日新聞出版)

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読書関係の大特集を様々な角度で取り組んできたAERAがこれまでに紹介した本をまとめた特集号です。

「貧困」は見世物なのかという特集に目がとまりました。

放送現場の後輩たちが苦労しながらまとめたテーマが掲載されていました。

「働く単身女性の3人に1人が、年収114万円未満といわれる日本。中でも深刻化しているのは、10代、20代の貧困です」親の貧困が、子に引き継がれる現実。中でも若い女性に重くのしかかっているという現実を、全国の記者やディレクターたちはプロジェクトを組んで報告しました。

放送番組は編集の過程で手に入れた情報や映像素材をカットします。時間的な制約やメディアの特性から盛り込めなかった記録を活字として残すことでより多くの人たちに知ってもらおうとまとめられたのがこの本です。

  • 「女性たちの貧困 “新たな連鎖"の衝撃」NHK「女性の貧困」取材班(幻冬舎

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「貧困」は社会問題となり多くのメディアでも取り上げられるようになりました。

しかしまだまだ貧困は解決されず、マスコミの描写には感情をあおるような手法が目立つと言います。蟻の目で伝えるだけでなく、鳥の目で見るために視点を変える必要がありそうです。

  • 「最貧困シングルマザー」鈴木 大介著(朝日文庫
  • 「最貧困女子」鈴木 大介著(幻冬舎新書
  • 「シングルマザーの貧困」水無田 気流著(光文社新書
  • 「高学歴ワーキングプアフリーター生産工場」としての大学院」水月 昭道著(光文社新書
  • 「高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか? 」水月 昭道著(光文社新書
  • 「子どもに貧困を押しつける国・日本」山野 良一(光文社新書
  • 「世界「比較貧困学」入門」石井 光太著(PHP新書)
  • 「隠された貧困」大山 典宏著(扶桑社新書)
  • 「失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで」大和 彩著(WAVE出版)
  • 「「超貧困」時代: アベノミクスにだまされない!賢い生き方」森永 卓郎著(清流出版

「資本主義の終焉と歴史の危機」 水野 和夫著(集英社新書)を読むと、構造を変えるには大変な力が必要になることがわかります。しかし、認識を共有し広げていくことは大切です。「貧困ブームに終わらせず、さまざまなコンテンツを発信し続けることが重要」という鈴木大介氏のコメントにあるように制作者が果たす役割は重いのです。

 AERAの1000冊の特集では鈴木大介氏、水無田気流氏、水月昭道氏の座談が掲載されています。事実を積み上げることから、見えなかった事実に光が当たることを期待します。

*1:写真は鈴木大介著「再貧困女子」