本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

埼玉ディスマンガ登場

放送局の書店にはマンガ本がほとんどありません。が

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ところが、平台の単行本に当然のような顔で並べられているのは

まぎれもなくマンガではありませんか。

 読者からの要望で取り寄せたところ反響を読んだのが、

  • 「翔んで埼玉」魔夜 峰央著(宝島社)

昨年12月に出版され現在13万部を突破する勢いで売れています。

書店でも平台に載せたとたんに売り上げベスト5に入りました。

売れるだけならほかのマンガ本も扱うのが筋です。

なぜこの本だけ特別扱いなのでしょうか?

気になる中身を見てみました。

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「おぞましい」ほど差別的な表現を感じます。

公平中立を旨とする放送局では、差別的な発言や、一方的な報道は「やっちゃいけない」ことなのです。当然、書店もそのあたりの空気を読んで「選書」をしなくてはなりません。

ところが、この本にかぎっては苦情がほとんど寄せられないそうなのです。

地元への自虐意識と東京への羨望が、ギャグ漫画ならではの演出で語られています。

「1980年代に雑誌連載したものを復刊した」と、著者の魔夜峰央氏は言っています。

パタリロ」の作者です。かつて埼玉県に住んでいました。

宝島社「このマンガがすごい!」の編集長、薗部真一さんは「日本社会の差別構造のメタファーだと指摘する声も届く」というように冷静な受け止められ方をされているようです。

一極集中で肥大化する東京。東京の植民地化する千葉や茨城などと比較しながら埼玉に寄せる地元愛の強さが伝わってくる作品といえます。

同書には、隣接する千葉や茨城なども掲載されています。

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「地域差を強調した内容が"ふるさと"の再認識につながる」(薗部氏)放送局の読者は冷静に深読みしながらギャグを楽しんでいるようです。