本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

売れる本は一冊あればいい

一冊しか本を売らない書店の話が朝日新聞に載ってました。

東京・銀座の大通りから少し離れた古いビルに、週に一種類の本だけを売る書展がある。5坪の店内に広がるのは、店主が厳選した本の世界観を体験できる空間。口コミで評判を集め、海外観光客も足を止める。(2016年1月23日朝日新聞

一種類しか本を売らないでやっていけるのか?と記事を読み進めると、店主は森岡督行さんです。森岡さんのことは以前読んだ晶文社のペーパーバック「就職しないで生きるには」シリーズの一冊「荒野の古本屋」で知っていました。

本書の内容は、「就職しないで生きたい」と考えていた自分が、ウロついた先の神保町の古本屋で就職し、その後古本屋として独立をし、つまりは現実社会にどっぷり浸かっていく様子です。二〇世紀が終わりを告げようとするころからおよそ一五年、私の身の上におこったことです。

荒野の古本屋/森岡督行 | 就職しないで生きるには21

銀座の店を開店するまでは、9年間茅場町で古書店を経営。固定客もついた中、突然店じまいしたというニュースに「惜しい店をなくした」と残念に思っていました。

ところが、新店舗開業のための発展的な閉店であったのです。昨年5月に開店した理由を「古書店で何度も開催した出版イベントで、著者や読者が喜ぶ顔を見て思い立った」と語っています。

「紙の本が生き残るにはコミュニケーションが重要。売る本は一冊あればいいんじゃないか」(同上)

毎週火曜日から6日間、一種類の本に絞って扱い、それと同時に店内の造作も大きく返るのだそうです。まるで舞台セットの中で演じる役者にあたるのが一冊の本というわけですね。

たくさん仕入れて多くの人に売るという従来の書店にはできないことです。誰もがまねできるわけではありませんが、考え方を学ぶことはできます。