本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

日本列島ちょっと昔の旅

熱気球に魅せられて世界一になった人を紹介するテレビを見ました。 

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熱気球佐賀県の大会が有名という程度のことしか知りませんでしたが、なかなか奥の深い競技のようです。

 

一度浮き上がったら風任せです。バーナーの火加減を調整しながら目的地をめざして地上のマークに標識を落とすという簡単そうなルールです。

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その競技を主人公の藤田昌彦さん*1は高校時代に読んだ本がきっかけでライフワーク?に選んだというから、本の持つ力はあなどれません。

 

高校時代、学校に興味を失った藤田さんは図書館で「熱気球 イカロス5号」という本に出会います。日本人初の熱気球有人飛行成功の記録でした。社会的な成功を得ることだけが人生の目的ではないのではないかと悩んでいた藤田さんは、「社会的意義がないことがやりたいのだ」という手記の一文に刺激を受け熱気球乗りになるという目標を得たと言います。

この本を探したところ、梅棹エリオ 著「熱気球イカロス5号」(中公文庫)だということがわかりました。

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有名進学高校をドロップアウトし、次に通った高校でも、学校での勉強に疑問を抱いて落第した著者。ふとしたことから「熱気球をつくって空を飛ぶ」という夢に向かって、仲間とともに奮闘し始める―一九六九年、日本で初めて熱気球の有人飛行を成功させるまでの挑戦を綴った青春の記録。

著者の梅棹 エリオ氏は、文化人類学者・国立民族学博物館名誉教授の梅棹忠夫氏のご長男という経歴を知って驚きました。「知的生産の技術」の著者です。フィールドワークに基づいた文明のとらえ方は放送局で仕事を続ける上で座標軸といってもいいものです。引かれたレールの上を走るばかりが人生ではない。人生は自らが切り開くものだという物語に、はからずしも出会った番組でした。

*1:1956年品川生。有限会社バルーンカンパニーの取締役社長。熱気球で日本人初の世界チャンピオンになった「世界のフジタ」と呼ばれている。