本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

書店員が世に出したい作品・・・とは

 書店員の眼そのものに商品価値がつく時代です。

レジで書店員が感じるお客様の手応えは貴重な生のデーターといえるからでしょう。ここに目をつけた「本屋大賞」の考え方は理にかなったものでした。

「次の柳の下は何か」と考えた賞がありました。

 

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2016年2月16日(火)に発表された「第2回 本のサナギ賞」の受賞作品。未発売の作品を書店員が審査・投票し「世に出したい」作品を選ぶという、出版物が存在しない出版賞です。

 今年で2回目を迎える「本のサナギ賞」は株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンが主催するエンタメ小説新人賞。

「この人の作品を世に出したい」と期待を込める作家を新しい本が大好きな「本の虫たち」主に現役の書店員*1が選考するというものです。

「本のサナギ賞」は賞金50万円*2。大賞作は業界としては異例の初版2万部にて書籍化されるほか、大賞作以外にも出版、または電子書籍化の可能性ありと伝えられています。

応募総数365作品の中から2次審査の結果、下記の5作品が選出されました。*3

「顔のない悪魔」今葷倍正弥*4著 (いまぐんばい まさや)

「まがいの家」古泉畔 著 (こいずみ ほとり)

「聖猫様の骨」媛ひめる *5著 (ひめ ひめる)

「アメリカンレモネード」百舌涼一*6 著 (もず りょういち)

 

最終選考の結果

大賞に『アメリカンレモネード』百舌涼一 著が

優秀賞には『顔のない悪魔』今葷倍正弥 著が選ばれました。

 

内容はこれから書籍化が検討されるものなので関係者以外はわかりません。内容は400字詰原稿用紙換算で 200~500枚程度程度と言うことですからそこそこのサイズです。

書店員に聞いて見ると「初耳だ」と言う答えでした。ですから審査員として名を連ねる書店員は大手書店の担当ではないかと推測されます。

「本に関心を持ってもらうのは悪いことではないが」といいながら複雑な感じだというのです。本という形になってはじめて評価の対象になるのであって、出版前に優劣を決めるのは金融商品のような感じがするのだといいます。お客様と対面する立場の者が、編集者とともに作品を評価するのもいかがなものか、なのだそうです。

本を手にとってもらうためには関係者全員が力を合わせないといけないのもわかるけど、と思います。難しい時代です。

 

自分の趣味には関係なく、売れると思ったら何でも紹介する。それが書店員の真骨頂だ。その辺は、紹介する本でその人の読書観を計られる書評家などとは違うところだ。彼らは署名原稿で書いているから自分の言葉に責任を持つ。しかし、書店員は違う。書店POPには書名がない。だからいくらでも好きなことが書ける。

書店ガール (PHP文芸文庫)

  

fictions.d21.co.jp

 

 

*1:審査員: 53 名 <書店員のみなさま、日本テレビ放送網株式会社事業局・ゼネラルプロデューサー・奥田誠冶様(1989年の「魔女の宅急便」からスタジオジブリ作品の製作に関わる。「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005)、「バケモノの子」(2015)を含む数々の話題作、ヒット作を担当)、(株)東北新社・映画製作事業部・プロデューサー・大屋光子様、(株)博報堂・PRディレクター・川下和彦様、「ダ・ヴィンチ」編集部>

*2:(ただし単行本印税のアドバンスとして)

*3:募集要項に違反している作品が確認されたため最終審査対象は以下4作品となりました。

*4:作品多数。様々な賞に顔を連ねている。

*5:「塔はそこにある」は第19回三田文学新人賞受賞作

*6:「1980年生まれ。大学卒業後、広告制作会社に就職。コピーライターを生業とする。変身なんかしたくない!」は第四回みらい文庫大賞第三次選考を通過作品