放送の仕事は情報の「橋渡し」でもあり「穴埋め」でもあります。
新人の頃よく聞いたのが、「番組づくりは、もらい屋であり、拾い屋だ」というたとえでした。犬のように鼻をきかせて落ちているものを拾い、持たざる第三者に手渡すといえば酔狂な稼業です。自分でものを生産する職業ではないのだから、謙虚でなくてはいけないと学んだような気がします。
情報の落差を埋める仕事を続けるにはそれなりの意識が必要です。専門性が高い職場などにありがちなことですが、等質な人間関係が日常的な社会では一般社会とかけ離れた生活感覚が生まれやすくなります。そこに閉鎖的、排他的な空気が生まれ、意識のズレが広がっていくように思えます。
科学番組担当者からすすめられたのがこの本。いくぶん過激なタイトルによくある医療ネタ本と思いましたが、著者の視点に納得しました。
技術や知識だけでなく『医学界のプライド』を叩き込まれる。医学用語の難しい言葉しか学んでいない。優しい事は難しく、難しい事はより難解な言葉で語る。しかし、難しい言葉で語る事は、患者の不安につながっている。そんな事に気付かない医者は素人。
医療関係者のホンネが綴られています。
奥仲 哲弥
肺がん専門の呼吸器外科医であり、日本有数の名医として知られる。3500例を超える手術実績を持ち、特に低侵襲手術(胸腔鏡手術や早期中心型肺がんに対する内視鏡的レーザー治療)を最も得意とする。手術だけでなく、化学療法や放射線療法に対しても造詣が深く、常に患者に対するベストな選択肢を提案する。肺がん専門の呼吸器外科医として、「診断から緩和ケアまで責任を持って診る」ことをモットーに、多くの患者をもつ。
禁煙の啓蒙の1つのライフワークとして取り組んでおり、多くの書籍を執筆している。セカンドオピニオン外来も行っており、全国から多くの患者が訪れる。