本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

本の「読」を「毒」と読む

買い置きした本は堆積物の中に埋もれた化石のようなものかもしれません。ツイッターに「本を大量に買い込んで置いておくと、読みやすいものから消化され、読むのに骨の折れるものが残される」とあるのを見て膝をたたきました。

 

 放送史という堆積物を掘り起こす労作が出版されたと聞いた書店員は、さっそく店頭に並べています。

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 「テレビが見世物だった頃」飯田豊*1 著(青弓社

表紙のデザインを見る限り、ライトなエッセイと勘違いしがちですが、内容は相当な資料を読み込み、検証を重ねた”論文"です。街頭テレビと力道山など時代を感じるエピソードもありますが、目玉は史実の掘り起こしです。

関東大震災によって鉱石ラジオが重要なインフラとして逓信省に認識された。

逓信省は翌年二月、全国どこでも放送を聴ける「全国鉱石化」を目指し、三局を統合した全国組織体を作ることを省議で決定する。 

関東大震災が放送を普及させたことまでは知っていましたが、「全国鉱石化」計画という笑ってしまうようなネーミングで呼ばれていたことまでは知りませんでした。

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放送局員なら、自分の仕事の成り立ちについて教養を深めるため、ぜひ買え。と進めたいところです。ではおまえはどうなのだ。と問われると、 私の本棚にも堆積物のような本がかなりあります。後先考えずに手に入れてしまい、読む速度が追いつかないという情けない理由で戸惑ってしまいそうです。 

「最後まで残された本を積ん毒と呼び、まじないに用いる」というのだと冒頭のツイッターに書かれていました。

 

*1:立命館大学産業社会学部准教授。1979年広島県福山市生まれ。メディア論、メディア技術史、文化社会学。『テレビが見世物だったころ―初期テレビジョンの考古学』(青弓社)、『メディア技術史―デジタル社会の系譜と行方』(編著、北樹出版)、『ヤンキー人類学―突破者たちの「アート」と表現』(共著、フィルムアート社)など。