本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

物欲と整理欲

店内の片隅にある「書店の本」のコーナーは、書店員たちの趣味が形になったコーナーです。ですから売れずに返品される本と違って、展示期間がものすごく長いという恩恵を受けているように思えます。その棚に登場したのが、

「無限の本棚」とみさわ昭仁 著(アスペクト)です。

 

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著者は神保町にある古書店の店主なのですが、どうやらただ者ではありません。目次を見るとわかるように「コレクター」という文字が目に入ります。古書店をはじめたのはコレクターでした。それも特殊古書店とあるように、B級というか一般の人には際物に近いジャンルを扱う店のようです。

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 なるほどと思ったのが著者が思い至ったコレクションの定義でした。

ぼくは物を集めることへの衝動を病的なまでに追求してきて、ようやくその正体を捕まえた。コレクションとは「物欲」と「整理欲」の二つから成り立っていたのだ。

どちらが主でどちらが従ということではない。

二種類のコレクターを別の言葉で表現するなら、物欲派は「愛好家」であり、整理欲派は「考古学者(もしくは考現学者)」となる。あるいは、物欲派を「Colletor(蒐集者)と、整理欲派を「Corrector(修正者)」と呼んでもいい。

様々な対象を蒐集しつづけた著者は、集めたものを眺めて楽しむのではなく、集める過程に意味を感じる自分に気がつきます。その結果、集めるために作ったリストを探し当てたものの確認で埋める作業(これを著者はエアコレクションと呼びますが)で満足するに至りました。何も集めないコレクターの誕生です。 

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著者が営む特殊古書店とは、彼が興味に任せて集めた本という物の形をした「クラウド」だったのです。

切手やカードなど、人は誰もが集める楽しみを知っています。しかし、何らかの事情でその限度を感じて深入りはしません。自分の中にあるコレクションの欲望と向き合う上で本書はヒントを与えてくれそうです。 

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