本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

作家に会いに行く本

漫然と店頭を眺めていたことを改めて感じさせられた本があります。 

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宮沢賢治中島敦 著(河出書房新社)は河出書房新社が葬儀用130周年を記念して刊行中の日本文学全集のうちの一巻です。2014年1月からほぼ月1冊のペースで出版予定ですが、興味深いのは「作家・詩人の池澤夏樹が“世界文学の中の日本文学”と位置付け、時代の変革期である今こそ読みたい作品を独自の視点で、古典から現代まで全30巻にわたって厳選しました。」とあるように、作家個人による全集です。

わあ、すごいと胸が締め付けられるような思いがしたのが、編集にあたる池澤夏樹氏が「日本文学全集宣言」として出版社に寄せた一文です。その中から抜粋。

・・・しかしこれはお勉強ではない。
権威ある文学の殿堂に参拝するのではなく、友人として恋人として隣人としての過去の人たちに会いに行く。
書かれた時の同時代の読者と同じ位置で読むために古典は現代の文章に訳す。当代の詩人・作家の手によってわれわれの普段の言葉づかいに移したものを用意する。
その一方で明治以降の文学の激浪に身を投じる。厳選した作品に共感し、反発し、興奮する。

私は誰か? 日本文学はそれを知る素材である。

池澤夏樹=個人編集 日本文学全集

 「会いに行く」「同じ位置で読む」「共感・反発・興奮」「私は誰か」・・・心の扉を叩くようなメッセージに気持ちが高ぶります。恋人に会うような感覚がよみがえる全集かもしれません。