本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

脳力アップに効く方法とは?

街の書店では「一流の育て方」が売れています。

オトナになってからでは遅すぎる。教育はのびざかりの3歳までがタイミングという親の願いが背景にあるようです。研究者のあいだでは、知能という器の大きさは生まれつきのものであり、後から大きく伸ばすのは難しいというのが定説だそうです。

「では、こういう本はどうです」と書店員が配架したのがこの本。

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世の中にあふれる「脳トレ本」のひとつじゃないですか。と反論したところ、書店員は「うちにはトンデモ本は置いていません」といいはります。(サブカルチャーコーナーに置いてあるではないか、と問い詰めると、サブカルチャーコーナーに並べるものと、一般書にならべるものとは分けてますという答え。強情です。)

 

この本によると、アメリカの最新研究は2008年のヤーキとブッシュクールというカップルの研究者による論文の発表をきっかけに大きく動き始めたといわれます。このあたりの説明は素人には難しいので本を読んでいただくとして、本書の特徴は、アメリカ人の科学ジャーナリストである著者が、最新の脳トレをはじめ頭がよくなる方法を、みずから実践体験することによって、科学者たちが挑み続けている研究の最前線を体験してみようというものです。

科学の世界の論争ですから、予備知識のない一般人にはついて行けない議論も登場します。ややこしい世界があることを伝えることも著者の思惑のようです。

ですから、本書を読めば「アタマが良くなるかも」と期待する向きには「お奨めできない」という書店員の主張もわかります。本書は「効く薬」ではないのです。

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専門性の高い世界の話を、一般人に飲み込みやすい形にかみ砕いて伝えるのが放送のかたちだとするなら、科学ジャーナリストがみずから実践体験することによって紹介していく姿勢は番組作りの参考になります。