本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

歌丸の終点

人気番組「笑点」(日本テレビ系)から司会の桂歌丸さん(79)が勇退しました。

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歌丸師匠といえば小圓遊。番組での罵倒合戦はお約束で、それを見るために笑点にチャンネルを回したことも多かった気もします。

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司会の三波伸介や円楽や喜久蔵の軽妙なやりとりがお茶の間を湧かせ、ひとつ本物の落語でも聞きに行こうか?なんて、気持ちにもなったものです。

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一昨年前、紀伊國屋落語会で休演*1されて生の歌丸師匠を見逃してしまったことが悔やまれます。ああ、あの高座をもっと見たかった。聴きたかった。・・・そういう時は過去の名演をビデオで見ましょう。 

放送局には過去の番組の蓄積があります。「アーカイブス」と呼ぶ映像の蓄積はいまも増え続けていますが、昭和の中頃までは映像の保存より媒体とよばれる録画テープ(胃60分収録のマスターテープが1本数万円)の使い回し方が優先され、貴重な映像もテープの再利用と引き替えに消去されてしまうのが普通でした。 

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そんな状況の中、比較的優遇されていたのが落語でした。もともと落語はラジオ放送が中心だった頃から、視聴率を稼げる(当時は)商品で、NHKやTBSなどでは通常は演芸を上演しないホールを使った公開収録の形で番組をつくり、それを保存してパッケージ販売などに再利用していたのです。今のようなお笑いブームがなかったことから庶民の娯楽だったのですね。

落語番組に逆風が吹いたのは2008年のことでした。NHK「ラジオ名人寄席」で発生した「落語音源無断使用事件*2」を境に落語番組の勢いは衰えて行きました。

最近になって、若手落語家に人気が戻ってきたのはうれしい知らせです。立川流噺家さんの独演会が満席になるなど、多摩川に鮎がもどってきたような感慨も覚えます。後進は育っています。老兵は死なずただ消えゆくのみ。歌丸師匠どうもありがとう。

 

歌丸 極上人生」桂歌丸祥伝社

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噺家生活64年、笑点レギュラー50年 小さいころから、とにかく落語が好きでした。落語家になりたくて、小学校四年頃には、ほかに何も考えられなくなり、自分の進む道は落語家しかないと決めていました。〈中略〉落語家になると言ったら、おばあちゃんに三日三晩泣かれました。それほど一途に思い込んでいたんです。やがて思い出が叶い黒門町今輔師匠に伺ったのは十五の秋でした。それから今日まで、それから今日まで噺家生活も六十四年になりました。〈中略〉  本書は、そういう強情な噺家の半生記です。お付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。

 

*1:2013年10月29日真景累ヶ淵の第六話と第七話を聴きに行く機会ができたのですが、直前になり師匠の体調不良により休演。代演は、柳亭市馬桃月庵白酒三遊亭小遊三という豪華な顔ぶれで得した気分になりました

*2:2008年03月にラジオNHK第1放送の番組『ラジオ名人寄席』で発生した「落語音源無断使用事件」です。番組は玉置宏が秘蔵する古い落語家のテープが披露されるのが目玉でしたが、2008年2月10日に放送された先代の林家正蔵の音源が、87年にTBSラジオで放送されたものであることが判明。NHKがTBSに謝罪し著作権料を支払ったという事件です。無断使用の著作権料は一千万円にのぼり、玉置宏は番組を降板『ラジオ名人寄席』も打ち切られた。