本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

週間ベスト10

文芸書部門のランキングです。 

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東京堂神田神保町店調べ(5月25日~6月1日)

福岡慎一の本棚で紹介されていた須賀敦子氏の著作が気になって本棚を見ると「ミラノ霧の風景」を発見しました。オビを見ると「死んでしまったものの、失われた痛みの、ひそやかなふれあいの、言葉にならぬため息の、灰 ウンベルト・サバ<灰>(本文より)」とあります。追憶のエッセイ。講談社エッセイ賞、女流文学賞受賞作に運良くブツかりました。6位の本は書簡の丸コピーです。未入荷ですが「出せば売れる」と書店員は強気です。 書評は人のためならず。

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1「古い洋画と新しい邦画と 本音を申せば」小林信彦 著(文藝春秋

精力的に本を読み、政治を注視し、戦前の洋画から話題作まで味わい尽くした二〇一五年のクロニクル。熱がこもる話題は、戦前の名画「素晴らしき休日」の面白さ、『ルビッチ・タッチ』邦訳刊行、四季の美しい「海街diary」、若尾文子の喜劇と悲劇、などなど。ただ、敗戦を体験した世代として、国会中継を見ていて「なんとも我慢ができないこと」は記しておきたい、とも。「週刊文春」好評連載「本音を申せば」の単行本化第18弾。


 

2「虚構の男」L.P. デイヴィス*1 著(国書刊行会

時は1966年、イングランドの閑静な小村で小説家アラン・フレイザーが50年後(2016年!)を舞台にしたSF小説の執筆にいそしんでいるところから物語は始まる。気さくな隣人、人懐っこい村の人々はみな彼の友だちだ。やがて一人の謎の女と出会い、アランの人生は次第に混沌と謎の渦巻く虚構の世界に入り込んでいく――国際サスペンスノベルか、SFか? 知る人ぞ知る英国ミステリ作家L・P・デイヴィスが放つ、どんでん返しに次ぐどんでん返しのエンターテインメントにして、すれっからしの読者をも驚かせる正真正銘の問題作!(1965年作)

3「岳飛伝 十七 星斗の章」北方謙三 著(集英社

岳飛と秦容は、南宋の程雲との最後の戦いに挑み、さらに呼延凌らと合流して、金国との一大決戦を目指す。兀朮との闘いで重傷を負った史進の生死は?大水滸伝シリーズ、ついに完結。感動の最終巻。

4「闇と静謐」マックス・アフォード*2 著(論創社

ミステリドラマの生放送中、現実でも殺人事件が…ジェフリー・ブラックバーン、暗闇の密室殺人に挑む!マックス・アフォードの最高傑作と評される長編第三作を初邦訳!

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5「翻訳出版編集後記」常盤新平 著(幻戯書房

早川書房における十年間の編集者生活。英米のエンターテインメント小説やノンフィクションを刊行し、出版界に新たな道を拓いた著者が、自らの体験を基に翻訳出版のあり方を問う、傑作回想記、新発掘!

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6「須賀敦子の手紙 1975―1997年 友人への55通」須賀敦子 著、 松家仁之 編集、久家 靖秀 写真(つるとはな)

雑誌「つるとはな」で大きな話題となった未公開書簡の完全収録版。

須賀敦子は1967年に夫ペッピーノを失い、70年に父を、72年に母を失った。帰国してまもない須賀は、深まる孤独のなかで生涯の友人と出会う。その友情はやがて、四半世紀にわたりつづくものとなっていった。こころを許した友人への手紙には、須賀の迷いや悩みが率直につづられている。ときにはさりげなく、恋の終わりが打ち明けられることもあった。55通の手紙を、青インクの筆跡もリアルな高精度カラー写真で掲載。

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7「大河内常平探偵小説選〈2〉」大河内常平 著(論創社

刀剣研究家としても活躍し、本格ミステリからヤクザ物まで幅広い作風で個性豊かな作品を残した大河内常平の作品集第2巻。デビュー作「地獄からの使者(原題「松葉杖の音」)や代表作「クレイ少佐の死」など、傑作短編を厳選収録。

8「羊と鋼の森」宮下奈都 著(文藝春秋

ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

9「竹中英太郎*3〈1〉怪奇 (挿絵叢書) 」末永昭二*4 著(皓星社

挿絵から小説を読む新シリーズとして、竹中英太郎が挿絵を担当した小説の数々をテーマ別に編集し、三冊の本の刊行を目指し製作作業をされてこられましたが、この度、第一弾として『 挿絵叢書 竹中英太郎(一)怪奇 』 が、5月24日に書店配本となりました。

『 挿絵叢書 竹中英太郎(一)怪奇 』 発売に・・・・・ | 竹中英太郎記念館 館長日記

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10「魔法の杖」ジョージア・サバス 著(ソニーマガジンズ

 「聞きたいことは何ですか。深呼吸をしてページを開いてください。そこにあなたの答えがあります」。あなたを導く運命のメッセージ。ビブリオマンシー「書物占い」の本。

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*1:1914~。イングランド西部・チェシャー州に生まれる。マンチェスター工業大学、マンチェスター大学に学び、検眼士の資格を取得。1964年にデビュー作『忌まわしき絆』The Paper Dollsを世に出すまで、英国軍や薬局等様々な職場を転々とする。レスリー・ヴァードル(Leslie Vardre)名義の作品もある

*2:オーストラリアの作家。高校を卒業して間もなく父親が亡くなったため社会に出て働くことを余儀なくされ、しばらく職を転々とした後〈アデレード・ニュース〉紙で新聞記者として活躍します。その後1932年頃からラジオドラマの脚本家に転身し、1930年代を中心にオーストラリア国営放送ABCのミステリ・ドラマの専属脚本家として600話を超える作品を発表する活躍を見せました。彼の作品は密室ものが多く、ジョン・ディクスン・カーばりの怪奇趣味に不可能犯罪を織り交ぜた本格ミステリを得意としています。

*3:1906~1988。福岡県生まれの挿絵画家、労働運動家、実業家。

*4:1964年、福岡県生まれ。大衆小説研究家。立命館大学文学部卒。『新青年』研究会に所属