本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

京都を応援するコミックがアツい

コミック関連棚の領域が拡大しています。表紙を外に向けて飾る面陳でアピール中のタイトルに、なにが"ついに”なのかわかりませんが、コミック化しちゃったことが書いてあります。「珈琲店タレーランの事件簿」の発行部数は160万部とすごいことになっています。

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この「珈琲店タレーランの事件簿」は原作は小説です。小説といってもネット上が初出の「ウエブ小説」ではありません。宝島社が主催する文学賞「このミステリーがすごい!」大賞の応募作品です。

 

ちょっと脱線すると、「このミステリーがすごい」この賞には少し変わった制度があります。1次選考に進んだ作品や最終選考に残り受賞を逃した落選作の中に、編集部が「賞をとれなくても作品にしたい」という原稿を発見した時に与えられる『隠し玉』という宝島社賞(編集部推薦賞)という制度があり、ナンバーワン以外の話題作が救済されるという仕組みです。(たとえて言うと、プロ野球ドラフト外育成枠選手が大ブレイクしたような作品といった感じです)

本作は大賞は逃しましたが、編集部が推す「隠し球」として2012年文庫本が発売されました。編集者の選択眼は当たり、発売と同時に版を重ねて結局シリーズ累計165万部の売り上げを記録してしまいまったのです。

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著者の岡崎琢磨氏は京都大学法学部出身。京都で学生時代を過ごし。実家のある福岡県太宰府市で実家の寺院に勤めながら執筆活動を続けています。京都を舞台にした小説の中から、最も地元の人に読んでほしい本を決める2013年第1回京都本大賞も受賞しました。

碁盤の目にような通りを利用したトリックや京都の伝統食を食べながらの会話やいかにも京都にありそうな設定などが人気の秘密のようです。

「京都は華やかな場所が多いが、魅力はそれだけではない。日常に寄り添う京都の町を描きたかった」と岡崎氏は語っています。 

最近、京都嫌いの本がヒットしていますがこの本は対極の「京都好き」の本といえるのでしょう。

さて、小説がヒットしたら他メディアでも展開するのが最近の流れ。込みからいずにあたっては、「まおゆう魔王勇者」のコミカライズ作品で知られる峠比呂氏が作画することになりました。

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放送局員は取材やロケなどで京都を旅することも多いので、地域に密着した作品は参考になります(取材先の人たちとの会話のタネにもってこいだからです)。さらに、放送局にはアニメ番組の制作関係者もいることから当然目をつけるはずです。

活字の読者以外の客層が開拓できるかもしれません。

 

こちらはコミカライズしたもの。

珈琲店タレーランの事件簿(1) [ 峠比呂 ]
価格:745円(税込、送料無料)


 

こちらが原作本。主人公の印象が少し違いますね。