本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

週間ベスト10

総合部門ランキングです。 

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東京堂書店神田神保町店調べ(7月5日)

広告はプロパガンダです。役に立つ商品を広く伝える分には害も少ないのですが、過ぎたるは及ばざるがごとしです。20世紀の各種プロパガンダ資料を蒐集する編集者・早川タダノリ氏*1の著書「「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜」で描かれる戦中の「自画自賛」は、まるで現代日本の言説状況を見るかのような内容です。タテのモノを斜めに見るのがマスメディアで働く者の性分ですのでツボを突かれた感があります。

 

1「伯爵夫人」蓮實重彦 著(新潮社)

【第29回三島由紀夫賞受賞作】 エロス×戦争×サスペンス 世界の均衡を揺るがす文学的事件! 帝大入試を間近に控えた二朗は、謎めいた伯爵夫人に誘われ、性の昂ぶりを憶えていく。

伯爵夫人 [ 蓮實重彦 ]
価格:1728円(税込、送料無料)


 

2「困難な結婚」内田樹 著(アルテスパブリッシング )

結婚しておいてよかったとしみじみ思うのは「病めるとき」と「貧しきとき」です。結婚というのは、そういう人生の危機を生き延びるための安全保障なんです。結婚は「病気ベース・貧乏ベース」で考えるものです。

どうしたら良い相手が見つかりますか?
お金がなくても結婚できますか?
本当にこの人と結婚して大丈夫でしょうか?
そもそもなんのために結婚するんですか?
結婚式はやったほうがいいですか?
家事はどう分担したらいいですか?
もしも相手に浮気されたら?
──すべてウチダがお答えしましょう!

困難な結婚 [ 内田樹 ]
価格:1620円(税込、送料無料)


 

3「HAB本と流通」エイチアンドエスカンパニー 

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〔読後感です〕出版流通のしくみがまとめられていて、全体像が俯瞰できました。「取次の役割と歴史」を読むと不況といわれる業界の構造が理解できます。

4「怪物君」吉増剛造 著(みすず書房

〔読後感です〕画集のような印象の本でした。綴られている文章どころか、意味というコンテンツを載せるコンテナ、つまりフォントのことですが、それも解体され再構成されています。どこかで見たことがあると、探し出したのが花沢健吾氏の漫画「アイアムアヒーロー」です。

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ゾンビ化した人間が発する意味をなさない言葉を、活字を使って表現しています。ひどく酔っ払った時に意識や視覚がゆがむことがありますが、うまく表現していると感心しました。

怪物君 [ 吉増剛造 ]
価格:4536円(税込、送料無料)


 

5「珠玉の短編」山田詠美 著(講談社

“珠玉”に取り憑かれた作家の苦悩を描く「珠玉の短編」、第42回川端康成文学賞受賞作「生鮮てるてる坊主」など11編の“絶品”をご堪能あれ。

珠玉の短編 [ 山田詠美 ]
価格:1620円(税込、送料無料)


 

6「人間晩年図巻」関川夏央 著(岩波書店

山田風太郎『人間臨終図巻』の衣鉢を継ぐ新たな「図巻」が誕生。1990年代を舞台に、世界的スターから市井の人まで、悲喜こもごもの晩年を匠の筆で描き出す。あの人はどんな晩年を送ったのか? 彼らが世を去った90年代とはいかなる時代だったのか? 本書には渥美清、ダイアナ元妃、司馬遼太郎伊丹十三城達也らを収録。

 

人間晩年図巻 [ 関川夏央 ]
価格:1944円(税込、送料無料)


 

7「餃子バンザイ!」今柊二 著(本の雑誌社

餃子には数えきれないほどの楽しみがある──肉汁と餃子愛がほとばしる満腹スーパーガイドエッセイ!

餃子バンザイ! [ 今柊二 ]
価格:1296円(税込、送料無料)


 

8「「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜」早川タダノリ 著(青弓社

テレビや雑誌でやたら目につく「日本スゴイ」の大合唱。「八紘一宇」や「日本人の誇り」を煽る政治家まで現れた。実は1931年の満洲事変後にも、愛国本・日本主義礼賛本の大洪水が起こっていた。「日本人の礼儀正しさ」や「勤勉さ」などをキーワードとして、戦時下の言説に、「日本スゴイ」という自民族の優越性を称揚するイデオロギーのルーツをたどる。


 

9「ねこのおうち」柳美里 著()

ひかり公園て?産まれた六匹のねことその家族が奏でる “命” の物語がいま、幕をあける――著者2年ぶりの最新小説!

ねこのおうち [ 柳美里 ]
価格:1620円(税込、送料無料)


 

10「私の消滅」中村文則 著(文藝春秋

このページをめくれば、あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない。不気味な文章で始まる手記―これを読む男を待ち受けるのは、狂気か救済か。

私の消滅 [ 中村文則 ]
価格:1404円(税込、送料無料)


 

*1:『「愛国」の技法』(青弓社)、『神国日本のトンデモ決戦生活』『原発ユートピア日本』(合同出版)がある。