本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

考えることを止めてはいけない

本日平台に並んだこの一冊

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「永遠の不服従のために」辺見庸 著(鉄筆)

それは、とうに予感されていた。そして、それはついにやってきた――「抵抗三部作」(『永遠の不服従のために』『いま、抗暴のときに』『抵抗論』)のアンソロジーに加えて、書き下ろし序文「廃墟に不服従の隠れ処をさがせ」と「きっとこうなるであろうことが、やはり、そうなったことについて――あとがきにかえて」を収録。「これをこのままほうっておくと、やがてはこうなるであろう」と著者が予感したとおり「そうなってしまった」世界で如何に生きるか。独りで考え独りで行動する、「独考独航」のための選集。

マスメディアに働く者たちは、「誠実に勤勉に従順に、戦争構造に加担している」 と辺見氏は言う。 とりわけ、もともと 「主張者ないし表現主体を意図的に消して、言説の責任の所在を曖昧にしてしまう」 新聞社説の最近の傾向がそうである。 すなわち 「人間として理解すべき哲理」 や 「人倫の根源への深いまなざし」 を欠き、「安全地帯から地獄を論じることの葛藤」 を微塵も感じさせないもので、 「ときとして鼻が曲がるほどの悪臭」 をはなっている。マスメディアに見られる戦争への自覚なき 「加担」 となし崩し的 「変質」・「堕落」 という怖さに触れながら、 「日常のなにげない風景の襞に、戦争の諸相が潜んでいる。人々のさりげないものいいに、戦争の文脈が隠れている。 さしあたり、それらを探し、それらを撃つことだ。」と提起する辺見氏の言説と姿勢には強い力があり全く同感である。

NPJ ブックレビュー 辺見 庸 著 『永遠の不服従のために』/木村 朗

 

辺見庸氏はこの書店にとって鉄板といってもいいほどの人気を集めています。読みやすいからというのではありません。むしろ読みづらい内容です。気むずかしい姑が障子の桟を指でこすりながら嫁に小言を言うような、作り手側の痛い部分を容赦なく切り裂き、ねじ伏せる視点があるからかもしれません。

当たり障りがないように見える表現ですら、だまされてはいないか、誰かが下書きしているのではないかと疑ってかかります。疑うと言うことが実は大切です。この仕事に携わる人々が、一番苦手としている「見えないものを見る」姿勢を氏の文章は問いかけます。自分の中にある「罪深さや恥辱への自覚」を鏡のように突きつけるところに、読者である同業者は共感するのかもしれません。