本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

日常生活を冒険に変える本

荻窪の書店「title」さんが普段見慣れている日常を、すこし違う角度から見た本を薦めています。すこし違う角度が書店の個性をつくるのだろうと思います。

書店員に聞くと「かつてはどこの書店にも棚作りにこだわりを持つ店員が少なくとも数名はいたものの、最近は減っている」「軸になる店員がいるかいないかは私のような書店員が見ればすぐにわかります」と、界隈にある書店を分類して教えてくれました。

そう言われると店内に入った時感じる「気配」(これは「読みたい本が発する購買欲」のようなものです)が、店によって極端に違うことでわかります。

「辻山良雄*1が薦める文庫この新刊」の三冊。(朝日新聞2016年8月14日版)

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 本屋 Title | 東京・荻窪の新刊書店・タイトル

 

1「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」坂口恭平 著(KADOKAWA/角川書店

題名の「都市型狩猟採集生活」とは、路上生活を送る人たちが日常の糧を得る「ゴミ集め」のこと。著者は現在の都心でも狩猟民族のような生き方が可能であることを実体験を踏まえて説明している。 

本中にいろんな達人が出てくるけどどの人もすげえ。
ダンボールハウス作る達人なんかはさぞかし凝った作りのを作るのかと思いきや超シンプルなハウスだし!そのシンプルさの裏に隠された多機能ぶりに脱帽。
電気の名人はバッテリーだけでレンジに冷蔵庫、エアコンまで稼働させるって、まじすか!?
さらに多摩川沿いに住み、通称ロビンソン・クルーソーも極めてる。
水道水はマズいと一切飲まず全部雨水。(降り出して2時間以上経った雨はキレくておいしいと)
隅田川沿いのエジソンなるおっさんなんかは中国の大地震でテント暮らしをしてる被災者の映像をテレビで見ながら「地べたに寝ちゃいかん!政府が言うなら出向いてって小屋作りを指導するのに!」としびれるセリフを吐く。この人達こそ東日本大震災の時派遣すべきスペシャリストだったんじゃないか、と強く思った。

アマゾンのレビューを見ると評価が極端に割れています。人が生きていくために働かせる「知恵」の大切さを深く考えさせられます。

2「増補 サバイバル!: 人はズルなしで生きられるのか」服部文祥 著(筑摩書房)

岩魚を釣り、焚き火で調理し、月の下で眠る──。異能の登山家は極限の状況で何を考えるのか? 生きることを命がけで問う山岳ノンフィクション。 

米と調味料だけを持って旅した記録。他の食料は現地調達。「自然にじかに身体をさらすことで、おぼろげな個人の輪郭がはっきりしてくる。豪快さと繊細さが入り交じる文体は、この著者の魅力をよく伝えている」と評しています。 

3「沖縄 若夏の記憶」大石芳野 著(岩波書店

豊かな風土に寄り添って独自の文化・伝統をはぐくみ、戦争の傷跡や基地の悲劇を背負いながらも、おおらかに生きる沖縄の人びと。七色の海、サトウキビ畑、密林の廃坑、色鮮やかな花々、そして日々の暮らしの中に秘められた記憶…復帰直後から島々をわたり歩き、多面的な魅力を撮りつづけてきた著者が、沖縄への熱い想いを綴った珠玉のフォトエッセイ。文庫版には新たに写真一〇点を追加。 

沖縄 若夏の記憶 (岩波現代文庫)

沖縄 若夏の記憶 (岩波現代文庫)

 

 「聞き続ける姿勢が凜とした作品に結実」評にある一文は良く伝わります。

*1:リブロ池袋本店でマネージャーを務めていた