本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

崩壊した組織の狂気を味わう本

反響を呼んだ単行本が新書化されました。この夏放送局でよく読まれた本の一つです。

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「戦場の軍法会議: 日本兵はなぜ処刑されたのか」北博昭、NHKスペシャル取材班 著(新潮社)

太平洋戦争中、敵前逃亡罪などを犯した兵士を裁くため設けられた「軍法会議」。戦争末期、ここで多くの日本兵が銃殺刑に処されたが、中には「不当に」死刑判決を受けたケースも含まれていた。裁判記録が焼却されて実態は謎のままだったが、元「法務官」が残した証言テープ、未公開資料、遺族・軍関係者への徹底取材から、タブーとされてきた旧軍の闇の部分が明らかになる。(2013年に単行本出版)

 

大きな組織はたえず自らの重みにより崩壊の危機を抱えています。そうならないために、ガバナンス、つまり管理・監督等の機能について「組織をまとめて治める」ことの重要性が叫ばれます。しかし、それはその組織の機能が正常に働いていればできることであり、機能不全となった組織では難しいといわざるを得ません。ましてや、その組織を裁く存在が不在の場合は野放しとなります。組織にとって都合の悪い事実は公開されることもありません。その犠牲は個人に集中します。取材者は個人にしわ寄せされた事実を拾い集め、破綻した組織の歪みに全体像を検証するのです。

軍法上は死刑ではない罪にも関わらず処刑される。また、そのように裁かれて有罪となった軍人・軍属は、靖国神社の名簿に載ることもなく、故郷においても肉親は周囲から白い目で見られた上に、かつては遺族年金をもらうこともできなかった。

軍という組織の前に個人は無力です。その軍を形作っているのは軍人という個人の集合体であることを忘れてはなりません。

 

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