本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

体力の極限を実感する本

今週登場したノンフィクションです。

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「漂流」角幡唯介*1 著(新潮社)

奇跡の生還から8年。マグロ漁師を再び海に向かわせたものは何だったのか? 1994年冬、沖縄のマグロ漁師・本村実は、フィリピン人らと共に救命筏で37日間の漂流の後、「奇跡の生還」を遂げた。だが8年後、本村は再び出港し二度と戻らなかった。九死に一生を得たにもかかわらず、なぜ再び海に出たのか? 沖縄、グアム、フィリピンなどで関係者らの話を聞き、漁師の生き様を追った渾身の長編ノンフィクション。

 

チベットのヤル・ツアンポー川大峡谷の未踏査部をたった一人で探検し、ネパール雪男捜索隊に参加し北極圏の北西航路発見のため派遣・遭難したジョン・フランクリン隊の旅程1600kmを徒歩で追った探検家・角幡唯介の新刊です。

放送局員の中には山岳部や探検部などのルーツを持つ人も多く働いています。カメラマンやディレクターとして、山岳取材や奥地取材に情熱を燃やすのは彼らで、運が良ければ生涯その道で仕事を続けることができる「恵まれた」存在といえます。その「秘境系」放送局員が注目するのがこの作家です。

山岳部出身のディレクターの仕事ぶりの壮絶さは、山岳取材にとどまりません。山で鍛えた体力は編集の際にも発揮されます。長尺番組は編集の終盤になると徹夜が続くことが珍しくありません。しかし、せいぜい二日の徹夜が続くと思考が鈍るので中一日は仮眠を取ります。しかし私の知る山岳系ディレクターは四徹(四日徹夜)は平気でこなしていました。このディレクター山でどんな体験をしてきたのでしょう。

 

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漂流 [ 角幡 唯介 ]
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*1:1976年北海道生まれ。ノンフィクション作家、探検家。早稲田大学探検部OB。朝日新聞退社後に執筆した『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で第8回開高健ノンフィクション賞、第42回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。雪男捜索隊に同行したルポタージュ『雪男は向こうからやって来た』など著書多数。2013年より朝日新聞書評委員を務める。最新刊に、読書エッセイ『探検家の日々本本』がある