本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

仕事の流儀「作るのは、ともに歩む足」

記録も大切ですが、パラリンピックは人が生きる上で乗り越えなくてはならない壁や多様な価値観の存在などさまざまなことを気付かせてくれます。それは競技者だけでなく競技者を支える人すべてに及びます。

書店担当者がお奨めするのがこの一冊

「転んでも大丈夫」臼井二美男 著(ポプラ社

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足を失い、心に傷を負った人々を、心身ともに支え続けている臼井二美男。患者のどんな願いにも真摯に向きあい、前向きに挑戦するよろこびを伝えつづけてきた著者が、人のいのち・生活を支える仕事のやりがいを語る。「もう一度走れるようになるなんて思いもしなかった・・!」足を失った人々に希望の灯をともす義肢装具士・臼井二美男のものがたり。

パラリンピックの記録を報道として伝えるだけでなく、ドキュメンタリーで伝えるのも放送局員の使命です。世の中の関心が競技に向かうタイミングは幅広い視聴者に障がい者を取り巻く現状を知って貰うチャンスでもあるのです。臼井二美男さんの生き方を追った番組が放送されます。

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プロフェッショナル仕事の流儀「作るのは、ともに歩む足」

パラリンピックのアスリートをはじめ、事故や病気で足を失った人たちの生活を支えるための義足を作るプロフェッショナルが臼井二美男さん*1です。一つ一つオーダーメードで、これまでに2000本をこえる義足を製作してきました。トライアスロン優勝を狙うアスリートが記録に挑むハイテク義足、日々の楽しみだった太極拳を続けたいと願う女性の義足、母の形見の着物を着たいと願う女性の義足、、、。臼井さんの作る義足は、絶望の淵にいる人たちに、再び生きる希望を与え、新しい人生を一緒に切り開いてくれる“パートナー”となります。
この夏もまた、さまざまな願いを持った人々が臼井の元を訪れてきました。スカートがはきたい女性、パラリンピックに出たいと願うアスリート、ハイヒールでおしゃれを楽しみたい女性・・・。「義足の仙人」とよばれる職人の、静かなる闘いの日々を追います。 

臼井さんの活躍はさまざまなメディアでも紹介されています。活動の原点は自著で確認ください。

転んでも、大丈夫: ぼくが義足を作る理由 (ポプラ社ノンフィクション)

転んでも、大丈夫: ぼくが義足を作る理由 (ポプラ社ノンフィクション)

 

障がい者と健常者が支え合うスポーツの祭典パラリンピック。放送を伝える側はオリンピックの放送とは違った姿勢で競技を伝えなくてはなりません。ルールの違いだけでなく、障がい者スポーツの歴史などを理解することで豊かな放送ができるのです。 

tanazashi.hatenablog.com

 

障がいを持つ人たちは、社会的に「弱者」に振り分けられます。 ハンディという弱さを抱えた人たちはひとりでは生きていけません。弱者同士のつながりは「弱いつながり」といえます。しかし、角度を変えて見るとちょっとやそっとの事には動じない「固いつながり」であることがわかります。

 

ヘルスエンジェルズサイト

www.healthangels.jp

パラリンピックサポートセンター公式サイト

www.parasapo.tokyo 

www.marsflag.com

*1:1955年群馬県生まれ。1983年から財団法人鉄道弘済会・東京身体障害者福祉センター(現義肢装具サポートセンター)で義足を作りはじめ、作った義足は1000本以上。1989年よりスポーツ義足を製作。1991年に陸上クラブ「ヘルスエンジェルス」を創設。2000年のシドニー大会より、パラリンピックの日本代表選手のメカニックとして同行。スポーツのほかにも、義足をつうじてアートやファッション界とのコラボレーション、大学との共同研究など、活躍の幅を広げている