本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

山形浩生<訳>不平等論

本日登場したのはこの本。

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「不平等論」ハリー・G・フランクファート 著、山形浩生*1 訳(筑摩書房)

経済格差が拡大する今日、「平等」には絶対的な価値があると考えられがちだ。しかし格差は本当に悪なのか?道徳哲学の権威が、なんとこれに異を唱える!平等主義は往々にして、まちがった信念に基づいている。収穫逓減なんて嘘で、所得再分配で社会全体の満足度が増すことはない。それどころか、平等主義はむしろ危険である。それはいったいなぜなのか?そして本当に重要なのは何なのか?経済的不平等から一歩踏み込んで、平等論そのものへの深い疑義へ。本書は格差論の本質にせまっていく。ピケティ『21世紀の資本』の訳者が翻訳。各種の議論を徹底整理しつつ本書の主張を位置づける、格差議論の決定版訳者解説付き。

 一般書というより、専門書に近い匂いがする本です。放送局員の中にはこれくらいカタい内容の本でないと満足できない読者層もある程度存在します。ですから置けば結構売れる(はず!)と書店員は自信たっぷりです。

表紙を見て感じたのは、著者と訳者のバランスがすごく不思議な本です。

初見の読者は十中八九、山形浩生が著者だと思うはずです。ところが本当の書き手は帯に書かれた外国人。山形浩生の役割は、名前の下に訳・解説と薄く小さくある。

訳者が著者より上にいるなんて、著者がなんて思うかマジ気になります。なんか禁じ手の宣伝っぽい本をよく筑摩さん出したなと、感心します。

「21世紀の資本」はピケティが騒がれ始める前からこの書店では売れていました。理由は山形浩生が訳したからと経済系の記者は言っていました。本が売れ始めてピケティの知名度も上がったのだから、本書の場合も特段不思議ではないと、書店員。「ハリー・G. フランクファート」といっても(一般の人にはたぶん)それが誰なのかわからないのに本を出してしまうところが凄いところなのでしょう。

 ハリーさんと山形さんがタッグを組んだ本を探してみると

ウンコな議論

ウンコな議論

 

タイトルがえげつない。でもページをめくりたくなる。「本文と訳者解説の分量が半々という珍しい書物である。学生時代なら、この手の本を題材にして大いに話に花が咲いたであろう」と評価する人が出るのもわかります。

『ウンコな議論』 ハリー・G・フランクファート (筑摩書房) ( その他人文科学 ) - 書いとかないと忘れちゃうから「読書記録」 - Yahoo!ブログ

おそらく筑摩書房は計算の上で本書を世に送り出したのでしょう。

内容はさておいて、柳の下に「にわとりと玉子」は再び現れるのでしょうか。書店は大いに気をもみます。

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*1:評論家、翻訳家。野村総合研究所研究員