本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

テレビでは伝えきれない貧困を活字で伝える

「貧困」という言葉は人々の好奇心を強く引きつけます。アラを探しだしたり責めたりと、言葉は負の連鎖を生みます。福祉番組の制作を担当した経験があるので「貧困」をテーマとした本が届くと気持ちが騒ぎます。 

評論家の水月昭道氏は当事者の明るい語り口の奥にある地獄が、読者には見えていないと語ります。

「自己責任論」は格差社会で、自分より困難な状況にいる人をたたきたくなる心理で、「たいへんなのはあなただけじゃないから」という「自分の心の悲鳴」でもあります。一見潔くシンプルな視点のようですが、社会問題として考える機会そのものを切って捨てていることですから、自分のことも救えない。

 

性風俗のいびつな現場」坂爪真吾 著(筑摩書房)

経済的にも精神的にも弱い立場に置かれた、最底辺の女性を救う道はあるのか。著者は経営者とも連携して店内の待機場所に弁護士を呼び、無料で生活・法律の相談会を開きます。*1お互い相容れないはずの行政と風俗を結びつける試みです。法的に保護・推奨することはできないが「容認」することはできるし、福祉の手を介入する糸口になるという行動です。

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tanazashi.hatenablog.com

 「最貧困女子」鈴木大介 著(幻冬舎

最貧困女子 [ 鈴木大介 ]
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*1:この本で描かれる風俗店経営者は基本的に女の子たちを助けたいという思いもあって働いているそうです。