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本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

元MOF担が暴露したイトマン事件の告白本・住友銀行秘史

ビジネス書が伸び悩むこの書店で、最近注目を集めているのがこの本

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住友銀行秘史」國重惇史 著(講談社

戦後最大の経済事件「イトマン事件」。保身に走る上司とぶつかり、裏社会の勢力と闘ったのは、銀行を愛してやまないひとりのバンカーだった。すべてを綴った手帳を公開する!

住友銀行の元取締役(当時は業務渉外部部付部長)であった國重惇史が「旧大蔵省に内部告発文を送ったのは自分だった」と告白した、戦後最大の不正会計事件「イトマン事件」の内幕です。1991年元日、朝日新聞のスクープ記事「イトマン二十五億円の絵画の不正転売」で疑惑が明らかになった事件です。旧住友銀行(現三井住友銀行)の巨額資金が、中堅商社イトマンの地上げなどにからんで闇社会に流れたとされます。社会全体のコンプライアンス意識が高まった現在の感覚で見ると、仰天するような価値観が、大企業と呼ばれる経営層に巣食っていたことに驚かされます。 

報道関係者や総務担当者、管理職層からの引き合いが増えています。それぞれ違った視点で読まれているような気がします。

「このままでは闇社会の食い物にされる」。住銀の部長だった1990年3月、実情を耳にして真相究明を決意。以来、記録をつけた手帳8冊をもとに執筆した。

描かれた動きは、まるで新聞記者だ。社有車の運転手の詰め所に毎年末、一升瓶を持参して情報源を開拓。役員フロアをはじめ行内の隅々にまでシンパをつくった。10年間のMOF(モフ)担(旧大蔵省担当)で培った人脈も活用した。

 イトマンの封筒と便箋(びんせん)で社員を装った告発文には、旧大蔵省銀行局長だった土田正顕氏も生前、「こちらを誘導するような正確な内容」と感嘆。親しい記者の報道を通じて経営陣を揺さぶり、検事にも資料を提供した、と言う。

 住銀取締役などを経て楽天副会長を務めたが、2年前に女性問題で辞任。編集者の説得に根負けしなければ、事件のことは「墓場まで持って行くつもりだった」。

 当時の役員の姿も実名で詳述した。「上層部は保身しか考えない。あなたの会社も、と伝えたかった」

朝日新聞2016年10月10日ひと欄 文・大鹿靖明 写真・堀英治)f:id:tanazashi:20161022160130j:plain