本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

佐々木俊尚さんおすすめの5冊

時代は「持たない生活」へ・・・読書週間を前に、エッセイストの平松洋子さんとジャーナリストの佐々木俊尚*1さんが、これまでの暮らしとこれからの暮らしを考えるトークを行いました。推薦本をまとめてみました。

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朝日新聞2016年10月27日の紙面より 

「イタリア料理の本」米沢亜衣 著(アノニマ・スタジオ) 

イタリア料理の本

イタリア料理の本

 

料理に恋をするということがあるのだとしたら、私は恋をした……料理研究家・米沢亜衣さんがイタリア各地の町の食堂で働きながら憶えた味、下宿先の台所でお母さんたちに教わった味、飾らない素顔のイタリア料理の数々を、重厚な写真と作りやすいレシピ、エピソードで紹介します。 

 21世紀に入って、20世紀的な合理化やシステム化と逆の現象が起きています。今や「持たない生活」がトレンドになりつつあります。米沢さんの本を読んで衝撃を受けたのは、写真がとにかく暗いこと。日本の料理が明るいのに比べて真逆のデザインです。見た目の派手さではなくその料理がどういう場面で作られ、どう食べたのか。料理が物語の中に位置づけられている。プラスをめざすのではなくマイナスに降りていこうという意識の転換が起きている。

「ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ」佐々木典士 著(ワニブックス) 

ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ -

ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ -

モノを最小限に減らすミニマリストという生き方。常識にとらわれない豊かな暮らし。

 ミニマリストという生き方を選択した若者の話です。規格化された生活を追うのではなく、街全体が自分の家であるという感覚にシフトしてきている「その先の生活」を垣間見ることができます。

 

「ウルトラライトハイキング」土屋智哉 著(山と渓谷社) 

ウルトラライトハイキング

ウルトラライトハイキング

 

本邦初のウルトラライトハイキング解説本。
アメリカの3000kmを超える長大なトレイルを数ヶ月かけて歩き通すスルーハイカー。
彼らは独自の理念で既成の商品にはない軽くシンプルな道具を自作し、歩き通すためのノウハウを確立してきた。
本書はアメリカ生まれのウルトラライトハイキングを解説するとともに、日本での実践方法を紹介します。
2週間の山行で総重量13kg、足元はスニーカーで充分、マットは切って使用など目からウロコの内容盛り沢山。

登山用品の経営者の本です。歩くという行為そのものに気持ちを集約させるため、荷物を徹底的に減らす。ある種登山のミニマリズムです。 

「反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか」ジョセフ・ヒース 著(アノニマ・スタジオ) 

反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか

反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか

 

カウンターカルチャーは、本当に社会を変えられるのか?
消費社会への批判と、その影響を受けた運動は、現実に問題を解決してきたか。資本主義に根ざす現代社会は様々な問題を抱えているとはいえ、それを根こそぎ否定してしまうことに問題解決の道はない。人びとの協力を引き出すために具体的な制度・ルールの設計こそが求められている。異色の哲学者ヒースとポッターのコンビが、カウンターカルチャーの矛盾を徹底的に暴く。 

つきつめるとオーガニックや無農薬野菜進行に行きがちな流れと違って、あるリカのカウンターカルチャーの意味を問い直す本です。反権威な主張は「大衆はだまされて農薬まみれの野菜を食べさせられているが私は違う」という立ち位置を指します。この考え方は自分を外に置くことで何でも批判できてしまうという落とし穴があります。しかし、今の時代はもっと緩く、格好を付けずに気持ちよさを大事に使用という方向に行きつつあると思います。

*1:1961年兵庫県西脇市生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。1988年毎日新聞社入社。岐阜支局、中部報道部(名古屋)を経て、東京本社社会部。警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人や誘拐、海外テロ、オウム真理教事件などの取材に当たる。1999年アスキーに移籍し、月刊アスキー編集部デスク。2003年退職し、フリージャーナリストとして主にIT分野を取材している