本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

米中もし戦わば

在庫切れが気になる話題の本です。 

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「米中もし戦わば」 ピーター・ナヴァロ 著(文藝春秋

◆トランプ政策顧問が執筆!◆
フジテレビ「新報道2001」(11・27)、東洋経済オンライン(11・28)で紹介!
・経済成長のために必要な原油の中東からの輸送ルートは、太平洋地域の制海権をもつアメリカによって抑えられている。
・空母と同盟国の基地を主体にした米軍に対抗するため、安価な移動式のミサイルで叩くという「非対称兵器」の開発を中国は進めてきた。
南シナ海尖閣諸島の海底に巨大な油田が発見された。
南シナ海尖閣諸島を囲む第一列島線。その内側の制海権を中国は握りつつある。
・歴史上、既存の大国と台頭する新興国が対峙したとき、戦争に至る確率は70%を超える。

経済、政治、軍の内情……。
最前線の情報をもとに、米中戦争の地政学を鮮やかに読み解く。
トランプの政策顧問による分析で、日本の未来が見えてくる!

 不吉の予兆は、はるか衛星軌道からとらえた地上写真に映し出されていました。

中華人民共和国の北端に位置するゴビ砂漠の荒涼とした風景の中に、大きさも形もほぼ完璧にアメリカの空母をかたどった標的が設けられている。現在、中国の誇る第二砲兵部隊が対艦弾道ミサイルの着弾を完璧なものにするために、この標的を使用している。

緊迫感ある書き出しで始まるこの本のは、経済学の視点から中国批判の論陣を張るカリフォルニア大学アーヴィン校教授のピーター・ナヴァロ氏の論文です。(巻末の引用先リストだけでも28ページあります)

米中もし戦わば

米中もし戦わば

 

ネット上で確認すると砂漠の上に走る不自然なスジが写った衛星写真が複数見つかりました。さらに辿ると砂漠上に四角いブロックのようなものが写っている写真に、航空母艦の写真を対比させるように載せているサイトも発見。 

http://images.china.cn/attachement/jpg/site1004/20130123/00111144d5a51269e54248.jpg

記事を読むと大変なことが起きているような気にさせられます。(ネット上の写真は出典先や掲載の意図が不明なものが多い、中にはねつ造写真すら見つかるので注意が必要ですが・・・)放送局員にとっては真偽のほどが確かめられない情報は飯のタネ。実際に現地に足を運んで至近距離からこの構造物?を映像で捉えることができれば大スクープになります。もしかしたら、すでに取材に入っている人もいるかもしれません。

中国の対艦弾道ミサイル 空母攻撃をシミュレーションか_中国網_日本語

トランプ次期大統領が選挙中にしばしば口にしたのが「反中国論」。軍事的にだけではなく経済的にもアメリカの国益を犯し国際的な混乱を引き起こしていると主張しました。

本書はトランプ次期大統領の政策顧問*1による著作。「防衛省現役組が今読んでいる本」という効果的なコピーも効いてか急に動きがでました。(補充注文を三回したほど)

しかし、この本の特徴は「戦争の地政学」とあるように、現状を冷静に分析し丁寧にその解を探る部分にあります。目次の章立てはQAのような構造で精緻な流れになっています。

 

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トランプ政権発足後に何が起きるのか、どう備えればいいのか、予習書の一つとして防衛省現役組(誰のこと?)だけでなく、放送局員が注目するのも分かる気がします。

社会学者の橋爪大三郎さんによると、「本書の掲げる練習問題を順に読めば、安全保障と地政学の基本が頭に入る」といいます。透明度が低く、ホットラインもない中国は先進諸国が開発した最新技術を取り込みながら軍備の拡充を続けながら、しばしば条約くも守らない国です。折からの北朝鮮問題が本書の分析をますますリアルなものにしています。「こうした知識を専門家だけのものにしてはいけない。議論はあくまで冷静に科学的に」と聞くと、放送局員のアンテナの感度が読み取れます。(売れてる本)『米中もし戦わば 戦争の地政学』 ピーター・ナヴァロ〈著〉赤根洋子〈訳〉:朝日新聞デジタル

*1:ナヴァロ氏は米誌「フォーリン・ポリシー」上でトランプ氏がレーガン元大統領の「力による平和」の外交戦略を受け継ぎ、海軍を増強して今後もアジア太平洋地域で自由を守る役割を担い続けるだろうと述べた。