富裕層の税金逃れ・・・遠い世界の大事件とみられがちなのがパナマ文書です。
「パナマ文書」バスティアン・オーバーマイヤー 著(KADOKAWA/角川書店)
「ハロー、私はJohn Doe。データに興味はあるか?」
「ジョン・ドゥ」とは、英語圏で裁判のとき実名が公表されては困る人物、あるいは身元不明の死体に用いられる仮名である。のちに「パナマ文書」と名付けられ、世界を揺るがすことになったスクープ。すべては、この身元不明の生ける死体からの一通のメールから始まった。
こうして、本書の著者である南ドイツ新聞のジャーナリスト、バスティアン・オーバーマイヤーのもとに214,000 の架空会社が関係、1,150万件にものぼるデータが秘かに送られて来ることになった。文書の出どころはパナマの法律事務所、モサック=フォンセカ。事務所の創設者の一人はユルゲン・モサック、ほかでもないドイツ人だった。
データ量は2.6テラバイト。過去のリークとは比べ物にならないサイズだ。オーバーマイヤーは米国ワシントンのICIJ に協力を求めた。データは国ごとに仕分けされ、最終的には70か国、400 人にも及ぶジャーナリスト達が調査活動を開始する。
それは『パナマ文書』の信憑性の検証、内容の理解、そして、データをストーリーに翻訳していく作業だった――。記者たちはいかにして各国首脳・独裁者・FIFA役員・財閥総帥、サッカー界の世界的スターであるリオネル・メッシらの巨額な隠し財産、そして、プーチン側近の極秘資産を発見したか。重要なのは名簿だけではない。そのデータに裏に隠されたものとは何か。
たちの悪いミステリーともいえる「パナマ文書」は、「庶民には手が届かない富裕層のスキャンダル」と 野次馬感覚で見ている人はいませんか?
暴露された文書に名前が残されていた日本人は700人もいました。税金逃れなど名前を公開されたくない人は相当数含まれているものと思われますが、中には普通の生活を営んでいる人が事件に巻き込まれていたこともわかってきました。
たとえば、パソコンなどの商品を購入するため、業者の求めに応じて手渡した身分証明が、パナマ文書に登場する怪しげな会社に利用され、個人情報が抜き取られていたという事実です。
NHKスペシャル「追跡 パナマ文書 衝撃の“日本人700人”」では私たちの身の丈に視点を据え、いつ降りかかるともしれない不気味な動きに肉薄していました。
NHKドキュメンタリー - NHKスペシャル「追跡 パナマ文書 衝撃の“日本人700人”」
◆番組のテキスト抜粋はこちらから
身分証明のため軽々しく免許証やパスポートを業者に渡すと、まわりまわって怪しげな会社の役員に名前を使われてしまうことがあります。判明しても取り消しが困難を極めるという事態は出版された書籍を見渡してもあまり明るみに出ていないことからスクープに当たると思います。庶民の名前をかたる不届き者。黒幕と見られる投資会社の実態をあぶり出して欲しいものです。
権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書、日米安保をどう報じたか
- 作者: 高田昌幸,大西祐資,松島佳子
- 出版社/メーカー: 旬報社
- 発売日: 2016/11/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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