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本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

池上冬樹さんが薦める新刊

選書

新しい本に出会うには、選者が薦める本を手に取るのが早道です。

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池上冬樹さん*1です。

http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110122_ikegami-san.jpg

 

「ありふれた祈り」ウィリアム・ケント・クルーガー著(早川書房

1961年、ミネソタ州の田舎町。13歳のフランクは、牧師の父と芸術家肌の母、音楽の才能がある姉や聡明な弟とともに暮らしていた。ある夏の日、思いがけない悲劇が家族を襲い穏やかだった日々は一転する。悲しみに打ちひしがれるフランクは、平凡な日常の裏に秘められていた事実を知ることになり…エドガー賞をはじめ4大ミステリ賞の最優秀長篇賞を独占し、「ミステリが読みたい!」で第1位に輝いた傑作。 

ありふれた祈り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ありふれた祈り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

家族の悲劇を回想する青春ミステリー。牧師の父親、芸術家肌の母親、音楽の才能に恵まれた姉、吃音症の弟とともに幸福な日々を送っていたフランクが様々な死を通して叡知を身につけていく。事件後から現在までを語るエピローグは、生と死が綾なす人生の妙を高らかに謳いあげていて極めて印象深い。 

「妻への祈り 島尾敏雄作品集」島尾敏雄著 梯久美子編(中央公論新社

戦時下、特攻隊隊長として赴任した奄美加計呂麻島での出会いと熱愛、不安と嫉妬で苦しみ心を病んでいく妻、奄美へ移住し重ねていく日々……。
島尾敏雄による妻ミホを描いた作品といえば『死の棘』が知られるが、本書では短篇やエッセイ、日記文学などをとおして、別方向から夫婦の姿に光をあてる。純文学の極北と称された小説家は、緻密な観察と描写によって、妻ミホの美しさ、無邪気さ、強さと弱さを描き出す。
現実は極限状態にありながらも、静かで時にユーモラスな表現の根底には、妻への常に新鮮な驚きと深い愛情がある。 

夫婦愛の地獄を描く『死の棘(とげ)』の妻ミホの姿に焦点をあてた作品集。どこまでも狂いながら夫を追い詰める妻と真摯に向き合う夫(「われ深きふちより」)から穏やかな日々(「日の移ろい」)まで。荒涼とした、でもそれこそが愛の果ての幸福であるかのような美しさがある。

 

 

「棺の女」リサ・ガードナー著 満園真木訳(小学館

ガレージで発見された、黒焦げの男の遺体。殺したのは、男にさらわれ全裸で監禁されていた20代の女性フローラ。現場に駆けつけた女性刑事D・D・は、フローラの素人離れした身の守り方に不信感を抱く一方で、男と3人の女性失踪事件との関連を疑う。そして、フローラもまたかつて世間を震撼させた誘拐監禁事件の被害者であることを知る。ところがその矢先、フローラがまたも失踪する。未解決失踪事件の被害者、フローラを取り戻そうとする母と彼女が唯一頼るFBI捜査官、そしてかつて彼女を監禁した男。一見バラバラだったピースがつながった時、あまりに壮絶な過去が浮かび上がる。そしてすべての謎が解けた時、震えるラストが……!
米国のヒットメーカーが新境地に挑んだ、カタルシスNo.1のハードサスペンス。

拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

 

誘拐・監禁された女性がいかに精神的かつ肉体的に苛まれ、自ら進んで異常犯罪者たちを狩るしかないかを克明に捉えたサスペンス。少女時代の無垢さを二度と取り戻せない娘と、それを見守るしかない母親とのラストの対話が胸に迫る。絶望的に悲しく、辛く、切なく、そして温かい。慟哭必至の感動作だ。

*1:文芸評論家、書評家。マルタの鷹協会会員。 山形市生まれ。山形県立山形中央高等学校立教大学文学部日本文学科卒。マルタの鷹協会に寄稿していた書評を小鷹信光に注目され、アシスタント業務を担当するようになる