本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

美しすぎるキャラクターが辿るナゾの旅・寝台鳩舎

コミックコーナーの書店員推薦本です。

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「寝台鳩舎」鳩山郁子*1 著(太田出版

戦時下の空に、機密を運ぶ任務を担いながら、無数に散っていった軍鳩(ぐんきゅう)。
どこにも帰り着くことができなかった彼らの魂と、少年ダヴィーの心の交流を描く。
魂を激しく揺さぶる傑作ダークロマン、大容量の描きおろしを加え、待望の刊行!

古屋兎丸、心酔。
「生ける通信兵器として訓練された彼ら。
傷つきながら飛ぶ姿に心の奥底が震えた。
鳩山さんの紡ぐ言葉、物語、少年たちは鳥肌が立つほど美しく、痛い。」 

ヴァイオレット・スプリング・シティへと向かう寝台列車
両親と旅行中の少年ダヴィーが出逢ったのは、奇妙な制服を身に着けた満身創痍の少年たちだった。
息も絶え絶えな彼らから預かったのは、一本の“通信管"。
この出逢いが、ダヴィーの運命を、少年たちの未来を変えていく。
美しく静謐な筆致で紡ぐ、希望と救済の一大スペクタクル。

鳩山郁子って誰?もしかしてBL?それにしては広告のコピー「魂を激しく揺さぶる傑作ダークロマン」が正統派過ぎる気もするぞ・・・いくつかの疑問を胸に版元を見るとやっぱり太田出版です。

 

一ひねりした作品や作家さんたちが続々登場するのが太田出版のコミックです。その太田出版webコミックに2015年9月~2016年2月に連載されていたものをまとめた一冊です。鳩山さんのプロフィールを見るとガロでデビューしたあと30年近く描き続けてきた・・・ということは大ベテランの漫画家さんでした。稲垣足穂も家系にいるらしい?とは知らなかったとはいえたいへん失礼しました。

寝台の奥で永遠の生と死を繰り返す美少年。移動鳩という珍しい着想。ビー玉、信書管、アーク灯の映写機、ジョゼフ・コーネルの小箱など、レトロかつ美しい小物類。ドラマの起伏よりも幻想的なディティールと空気感にこだわり抜いたファンタジー

【Web漫画】幻想文学ばりの奇想と耽美! 鳩山郁子『寝台鳩舎』が読み応えアリなダークファンタジーで面白いぞ - mitok(ミトク)

幻想文学系の世界観ファン必読の書。コアな女性ファンならはまり込みそうな気がします。 

webcomic.ohtabooks.com

*1:神奈川県生まれ。1987年、「ガロ」にて「もようのある卵」でデビュー。代表作に、『月にひらく襟』 『スパングル』 『カストラチュラ』 『ミカセ』 『シューメイカー』 『ゆきしろ、ばらべに』 『エルネストの鳩舎』、画集『リテレール』など。雑誌「アックス」などで漫画を不定期掲載