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第7回「このマンガがすごい!」大賞に「ECHOES(エコーズ)」

第7回「このマンガがすごい!」大賞*1に女子高生それぞれの悩みや葛藤を描いた女子バスケマンガ「ECHOES(エコーズ)」が選ばれました。早速注文をかけ、年明けには店頭に飾りたいと書店員は語っています。

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「ECHOES(エコーズ)」歩(あゆみ)*2

本書は、著者・歩(あゆみ)さんの実体験を織り交ぜ描かれた女子バスケットマンガです。男性の心を持ちトランスジェンダーであることに悩み葛藤する主人公・青(せい)、過去の人間関係から人を信じられなくなった飛鳥、過去への罪悪感と自分の情けなさと戦うキャプテン金子など、それぞれの部員が悩みを抱え葛藤しながらも成長していく姿を描いています。著者自身、3歳の時から自身の性に違和感を感じており、今回のマンガは、ひとつのコミュニティの中には様々な人がいてもいいんだというメッセージ、トランスジェンダーが特異ではない世の中になってほしいという願いを込めて制作しました。新人とは思えない躍動感のある画力、物語の構成が評価され、満場一致で今回の受賞に至りました。

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【著者受賞コメント】
最優秀賞受賞は、未だに信じられないくらいです。大事に守ってきたこの作品が良い機会に恵まれてよかったです。女の子が活躍する物語は、きらびやかで可愛らしい作品が多いと思うのですが、正統派な作画で、人間としての女性をかっこよく描きたいという思いで制作しました。

【選評】宝島社 第2書籍局 第2編集部編集長 薗部真一
本作はかつて女子高校生としてバスケ部で活動した、現在“男性”である著者自身の「性の違和感」をテーマのひとつとした作品です。でも実は、それはテーマの「ひとつ」に過ぎません。
圧倒的な画力、作品のテンポ、読者を強烈に惹きつける表情の力によって、おそらく想像していたのとは、まったく違う読後感を抱かれると思います。

このマンガがすごい!」が商業誌に掲載された作品群のベスト10だとしたら、こちらは宝島社が設けた新人の登竜門です。「これまで『このマンガがすごい!』を通じて、他社の漫画を選ぶ立場にいた。しかし、これからは選ばれる側の作家や作品を発信していくことで、自社だけでなく業界全体の活性化につなげられるのではないかと考えている」とあるように、対象となる作品の幅が広いのが特徴です。掲載媒体がないことで決められた枠組みにとらわれず、他社が見逃したジャンルレスな作品を多く受け入れようという狙いがあります。

新鮮な作品の登場は売り場の活性化にもつながることから、書店としても注目(若干のリスクはありますが)しています。また、内容も現代的なテーマを内包していることから、報道や教育・福祉番組関係者の関心を呼びそうです。コミックコーナーは3棚程度に拡大をする予定で、コーナーの目玉商品として活躍を期待しています。

このマンガがすごい! Comics ECHOES (このマンガがすごい!comics)

このマンガがすごい! Comics ECHOES (このマンガがすごい!comics)

 

konomanga.jp

オフィシャルサイトでは毎日10ページずつ公開、6時間ごとに内容を更新しています。 

 

*1:宝島社が2005年から毎年発行している漫画の年間ランキングブック『このマンガがすごい!』と連動し、作家を発掘・育成するために設立した新人マンガ大賞

*2:1988年9月生まれ。28歳。北海道旭川市出身。現在は東京都在住。北海道芸術デザイン専門学校イラストレーション専攻卒業。スマートフォン向けゲーム制作会社でデザイナーを経験後、現在は、フリーランスイラストレーターとして活動中。3歳のときから性の違和感を感じていたが、19歳
のときにトランスジェンダーであることを自覚