2016私の三冊
1「野良ビトたちの燃え上がる肖像」木村友祐 著()
「生きてるうちは、生きなきゃなんねぇからな」怒りと希望に満ちた世界を描く問題作。河川敷で猫と暮らす柳さんは、アルミ缶を集めて生活費とキャットフード代を稼いでいる。あちこちでホームレスが増えてきたある日、「野良ビトに缶を与えないでください」という看板を見つける。やがて国ぐるみで野宿者を隔離しようとする計画が……。ほんの少しだけ未来の日本を舞台に、格差、貧困、差別の問題に迫る新鋭の力作。
暴力の後ろにある怯えを見据える目は、弱者ならではの力なのかも。
2「きみがぼくを見つける」サラ・ボーム 著(ポプラ社)
海辺にひとり暮らす「ぼく」は、雑貨店の貼り紙で見つけた犬を連れ、奇妙な逃避行を開始する。なぜ「ぼく」は「きみ(犬)」を求めたのか? 圧倒的な孤独の底から浮かび上がる、胸揺さぶる驚くべき秘密――。ブッカー賞受賞作家アン・エンライトが「真昼の炎のような作品。美しく、不意を衝く。目に見えないほど幽かなのに、その威力たるや測り知れない」と激賞した、アイルランド文学の話題作。
暗い道で小さな灯を一新に見つめているような、忘れがたい印象。犬一匹そばにいれば出口を見いだせる。人間ってそんな生き物である。
3「i(アイ)」西加奈子 著(ポプラ社)
「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!
紛争や災害による死者の数をノートに書き続ける女の子は、自分の居場所を問い続ける。世界の問題を自分の事として考えるチャンネルを開いてくれる話。