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宮沢章夫さんが選んだ今年の三冊

2016私の三冊

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宮沢章夫*1さんが選んだ今年の三冊。

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1「日本戯曲大事典」大笹吉雄岡室美奈子神山彰扇田昭彦 編集(白水社

明治・大正・昭和・平成のおよそ150年間に発表・上演された10000超の傑作戯曲を、1250名の作家の代表作とともに紹介。「新作文楽」「新作能狂言」「宝塚・レビュー」「人形劇」「高校演劇」などについては、別項目を立てて、ジャンル別に解説。岸田國士戯曲賞をはじめ、戯曲賞と銘打たれた賞のうち代表的なものについて受賞(作者)一覧を特別付録。索引は、「人名」「作品名」について最大限に探るべく立項(15000以上に及ぶ項目を収録)。

日本戯曲大事典

日本戯曲大事典

 

凄い仕事だ。これがすべてと言えないにしても、かなり網羅し、執筆者の熱意も感じる。作家と作品の内容が紹介され、なにか調べ物が必要になったとき助けてくれる。

2「「J演劇」の場所: トランスナショナルな移動性へ」内野儀*2 著(東京大学出版会

世界の現代演劇の文脈に占める、特異で、凡庸で、閉塞した、しかし可能性に満ちた「J演劇」とでも称すべき場所。小劇場ブーム以降、2010年代までの日本のパフォーミング・アーツが問うてきた、時代、ドラマ、身体を、世界のマッピングのなかで、著者ならではのスリリングな文体で論じる、今世紀もっとも重要な現代演劇論。

 現在との誠実な向かい合い方であり、この国の演劇との真摯な対話だと考える。これまでの演劇を深いところで捉え、方向性が説かれ、多くの示唆を与えられた。

3「老人ホームで生まれた〈とつとつダンス〉: ダンスのような、介護のような」砂連尾理*3 著(晶文社

京都・舞鶴特別養護老人ホームで始まった「とつとつダンス」。お年寄り、ホームの職員、地域住民らが参加する不思議なワークショップとダンス公演が、いまアートや介護の世界で注目を集めている。一緒に踊るのは、認知症や障害を持つ人など、さまざまな高齢者たち。気鋭のダンサーが老人ホームで見つけた身体コミュニケーションの可能性とは──。

ダンスがより好きになった。こんなに豊かな表現の世界だということ、それを言葉にし、示してくれた。人のからだが表現する力を「身体論」と仰々しく語らず、やわらかい言葉で解く。感銘を受けた。

*1: 劇作家、演出家、作家。遊園地再生事業団主宰

*2:東京大学大学院総合文化研究科教授

*3:振付家・ダンサー. 1965年、大阪生まれ。学生時代よりダンスを始める。 1991年、寺田みさことダンスユニットを結成。 1993年〜1994年、ニューヨークにダンス留学