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本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

星野智幸さんが選んだ今年の三冊

2016私の三冊

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星野智幸*1さんが選んだ今年の三冊。

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1「おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are」 松田青子 著(中央公論新社

わたしたち、もののけになりましょう!
あるときは訪問販売レディ、あるときはお寺の御朱印書きのアルバイト、そしてあるときは謎の線香工場で働く〝わたし〟たち。
さて、その正体は――?!
八百屋お七や座敷童子、播州皿屋敷お菊たちがパワフルに現代を謳歌する痛快連作短篇集。

嫉妬、憎しみ、孤独に苛まれ、お化けとなった女たちの並々ならぬパワーが昇華され、現代女性の生きにくさをも吹き飛ばす!
ここにしかない松田青子のユニークかつ爽快な17つの物語。

おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are

おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are

 

人間も動物も死者も妖怪もその他も、みんなごたまぜに生きている。風通しが良くて、この小説世界が楽しすぎて、読んでいることが爽快。 

2「かわいい海とかわいくない海end.」瀬戸夏子*2 著(書肆侃侃房)

消防士と強盗がかなしく分かつポカリスエットに頰を打たれた 宗教における蛍光の十重二十重ただまっすぐの宿命なんて ひどい嵐ひどい満開そのただなかにして鏡を財布に 歌集。

かわいい海とかわいくない海 end. (現代歌人シリーズ10)

かわいい海とかわいくない海 end. (現代歌人シリーズ10)

 

私の短歌の通年を破壊し尽くした。この言葉の氾濫と強靱な批判性は体験して貰うしかない。

3「非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か 」杉田俊介 著(集英社

性体験、雇用、加齢、家族…。男性の抱える悩みが今ほどクローズアップされた時代は、過去にないだろう。男はなぜ、今の世を生きづらく感じるのか。根底にある男の「弱さ」、その先に見える「新たな男らしさ」とは?本書は、客観的な突き放した立場からではなく、男性たちの弱さに寄り添いながら問題と向き合い、たとえ愛されず、承認されずとも、優しく、幸福に生きていく方法を探った全く新しい男性批評である。

たいていの男は、男であることをこじらせて恨みを溜めている。それを暴力に向かわせないためにめくる本。女性は最初は嫌悪感を覚えるかもしれない。でもこの本を避ければ、差別主義者の激増を黙認することになるだろう。 

*1:小説家、1965年、 アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。88年、 早稲田大学卒業。2年半の新聞社勤務後、 メキシコに留学。97年『最後の吐息』で文藝賞を受賞しデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、 03年 『ファンタジスタ』 で野間文芸新人賞、11年 『俺俺』 で大江健三郎賞、15年 『夜は終わらない』 で読売文学賞を受賞。

*2:1985年生まれ。早稲田短歌会、「町」(2009年~2011年)を経て、現在「率」同人。2012年、第一歌集『そのなかに心臓をつくって住みなさい』