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本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

末國善己さんが選んだ今年の三冊

2016私の三冊

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末國善己*1さんが選んだ今年の三冊。

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1「孤高のハンセン病医師――小笠原登「日記」を読む」藤野豊 著(六花出版)

らい予防法廃止から20年、ハンセン病国家賠償訴訟熊本判決から15年。ハンセン病患者をことごとく療養所に収容しようとした癩予防法のもとで、自らの医学的知見にしたがい、絶対隔離の必要なし、と療養所外での自宅治療・通院治療を敢行した医師・小笠原登の「もうひとつのハンセン病治療」。その思想と実践を、遺された日記・諸資料を駆使して検証、実体に迫る。 

孤高のハンセン病医師――小笠原登「日記」を読む

孤高のハンセン病医師――小笠原登「日記」を読む

 

国が進めたの強制隔離に一貫して反対した医師・小笠原登の実像を通して、日本のハンセン病政策の非人道性に迫っている。医学的知見と良心に基づき、国策の誤りを指摘した小笠原の姿勢には学ぶところも大きい。

2「秋萩の散る」澤田瞳子 著(徳間書店

わしと共に、京の者たちを呪い殺そうとは思わぬか――。薬師寺別当に任命され、遠い京から下野国にやってきた道鏡は、行信という僧から禍々しい誘いを持ちかけられる。一瞬、道鏡の心を過ぎったのは……。日本の威信と将来を担う人々の姿、奇跡のような瞬間が、奈良の都に満ちる。『若冲』の著者による、人生の機微に触れる傑作歴史小説

秋萩の散る (文芸書)

秋萩の散る (文芸書)

 

 失脚した銅鏡がたどり着いた境地が感動的な表題作は出色。

3「スペース金融道」宮内悠介 著(河出書房新社

「宇宙だろうと深海だろうと、核融合炉内だろうと零下190度の惑星だろうと取り立てる」新星金融コンビ!新本格SFコメディ誕生。 

スペース金融道

スペース金融道

 

SF、ミステリー、経済小説の要素が渾然となっている。コミカルな物語の中に、アクチュアルなテーマをオリコンだ手腕も光る。

*1:文芸評論家、アンソロジスト日本推理作家協会会員で江戸川乱歩賞予選委員。探偵小説研究会会員。大衆文学研究会副会長。 広島県生まれ。明治大学卒。