2016私の三冊
1「尊厳と身分――憲法的思惟と「日本」という問題」蟻川恒正 著(岩波書店)
「個人の尊厳」に含まれるパラドクスを原理的に考察し、九条論・憲法上の権利・憲法判例を再構成する。高い身分の普遍化として「個人の尊厳」を捉える表題論攷の他、憲法的思惟にとって「日本」とはいかなる問題かを分析する諸論攷を集めた待望の論集。
2「在日二世の記憶」小熊英二、高賛侑、高秀美 著(集英社)
「一世」以上に劇的な運命と、アイデンティティをめぐる困難な問いに翻弄された「二世」たちは、「戦後/解放後」の時空を、各分野のパイオニアとして、逞しく生き抜いてきた。三〇〇〇本以上のヒットを量産した天才打者、哲学者、実業家、医師、社会運動家、ミュージシャン、僧侶、伝統工芸職人、格闘家、劇団員、マジシャン、映画人―。「在日コリアンの声を記録する会」がまとめ上げた五〇人のライフ・ヒストリーは、いずれも深い感動を呼び起こす。足掛け一三年にわたって完成した、近現代史の第一級史料。
3「原節子の真実」石井妙子 著(新潮社)
第15回新潮ドキュメント賞受賞!
小津との本当の関係、たったひとつの恋、経歴の空白、そして引退の真相……
伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版の本格評伝。
その存在感と去り際、そして長き沈黙ゆえに、彼女の生涯は数多の神話に覆われてきた。
真偽の定まらぬままに――
3年以上の歳月をかけ、埋もれた肉声を丹念に掘り起こし、ドイツや九州に痕跡を辿って浮かび上がったのは、
若くして背負った「国民的女優」の名と激しく葛藤する姿だった。
未公開のものも含め、貴重な写真を多数収録。