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本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

デーモンの画家 ヴルーベリ

最近登場した美術関連の評伝。

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「デーモンの画家 ヴルーベリ」植田樹 著(彩流社

異端の天才画家 ──信念の生き様と彼を取り巻いた芸術家たち 不遇を託ちながらも、自分の絵の探求を目指して 歩き続けたヴルーベリ。 明晰な理性と自らを破滅させる情熱をもって 絵画と格闘し続けた生き方は セザンヌゴーギャンゴッホを連想させる。 時代を先駆けた作品は、後を追う者からの評価は 受けても、その声はいつもそれは遅すぎた。 社会主義ソ連時代に日陰の存在だった彼の作品群は、 いまやロシアを代表する画家として完全に復権した! 日本初のヴルーベリ紹介の本格的な評伝! 革命前のロシアインテリゲンチャ世界の断面でもある…

著名な画家やアーチストの作品は、美術番組にとって客を呼べる花形スターと言えます。しかし大スターにまつわるエピソードもまた知れ渡っている場合が多いので、制作者にとっては知識勝負、構成力勝負にならざるを得ず、新鮮味に欠ける場合が少なくありません。ですから、ある程度経験を積んだ制作者は、無名の画家やアーチストに手を広げ、その人間を掘り下げることで美術作品に新たな光を当てることを試みるようになります。

本屋にできることはそのお手伝いです。あまり知られていない作家を扱った本が登場したらまずは目立つ所にお披露目します。単純な方法ですがこれが結構喜ばれています。

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ロシアの画家、ミハイル・ヴルーベリ(1856~1910)は聖母やキリストに混じって、悪魔・デーモンを描いた画家として知られています。孤高の画家として社会主義ソ連時代に日陰の存在だった彼の作品群は、ロシアで再評価され始めています。

 

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モスクワのトレチャコフ美術館の二階の二室がぶち抜かれ、体育館のように巨大な空間がロシアのアールヌーヴォーの先駆けでもあり、象徴主義的なタイトルを持つ絵画を世に出した偉大な画家ミハイル・ヴルーベリ(1856-1910)の作品の展示に宛てられている。レーピンだって、ここではこれほどの扱いを受けていない。ヴルーベリは絵画のみならず、陶芸やステンドグラスの制作もした。ウクライナキエフにある聖キリル教会の壁画の制作も依頼されている(これはいずれご紹介できると思います)。モスクワ屈指の最高級のメトロポール・ホテルの壁画の下絵も手掛けている。彼のいかにも象徴主義的な側面は、「夢の女王」とか「横たわるデーモン」、「座るデーモン」などの作品に現れている。アール・ヌーヴォー的な側面は彼の装飾芸術に見ることが出来るだろう。

http://blogs.yahoo.co.jp/maried_agoult/23156371.html

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こうした評伝を下敷きに、作家の辿った人生と時代状況を取材していくうちに、今の世の中に通じる普遍的なメッセージが見えてきたらしめたものです。長尺の美術ドキュメンタリーができあがるかも知れません。