「Synapse」ビデオリサーチ
メディアで働く人をつなぐ情報誌というか、同人誌にちかい内容の商業誌です。編集は視聴率調査で知られるビデオリサーチが担っていることから、テレビ局の人が多く登場しますが、広告関係までつながりは伸びています。書籍扱いになるため、雑誌やムックの棚ではなく、メディア関係の本とあわせて平積みにして鵜並べます。3ヶ月に一回の発行、テーマも様々なので売れ行きは微妙に上下します。
通巻12号目の新刊は 「売れるテレビ」。インターネット配信が怒濤のように伸びていることからテレビ編成は難しい曲面を迎えつつあります。そのなかで「テレビはこうしたらよくなる」と言いきるところが冒険的な気もします。
中身を見ると、金のかかりそうな奇想天外な企画提案が並んでいるわけではありません。というより、掲載されているのは現場で働くテレビマンたちのインタビュー企画で、しごくまっとうな記事が熱い言葉で語られています。
ページをめくると「クライアントにおねらない」という言葉が目に刺さります。言うは安く、行うは難しい決意表明を語るのはクリエイターの人です。
過去の企画を見てみる、視聴者側というより作り手側の視線に立つ編集方針であることがわかります。
混沌としたメディアの未来に広がるのは先の見えない砂嵐のような世界。坂の上にはなにが見えるか、衆知を集めてともに乗り切ろうと、本は呼びかけているかに見えます。
時間とコストに追われる制作現場は、自己撞着になりやすい環境といえます。(電通のようなケースは決して他人事ではありません。放送日が近づくと2徹、3徹はあたりまえでした)同じような企画を繰り返すと批判されますが、新しい企画が必ず受け入れられる保証はありません。制作者通しの悩みを吐き出す機会もほとんどないことから、本書のような企画は貴重だと思います。
いままでも、そしてこれからも制作現場を担うのは30代を中心とした若い世代であることには変わりはありません。制作現場を支援する意味でもこの本は平積みで売っていきたいほんの一つです。