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明治警察を描いたサーベル警視庁

新人記者の初仕事は警察担当。夜討ち朝駆けで鍛えられたベテラン記者は、警察小説で駆け出しの頃を思い出すのだそうです。f:id:tanazashi:20170120160945j:plain

 

「サーベル警視庁」今野敏 著(角川春樹事務所)

明治38年7月。国民が日露戦争の行方を見守るなか、警視庁第一部第一課の電話のベルが鳴った―。殺された帝国大学講師・高島は急進派で日本古来の文化の排斥論者だという。同日、陸軍大佐・本庄も高島と同じく、鋭い刃物で一突きに殺されたとの知らせが…。警視庁第一部第一課は、伯爵の孫で探偵の西小路や、元新選組三番隊組長で警視庁にも在籍していた斎藤一改め藤田五郎とともに捜査を進めていくが―。帝国大学講師・夏日漱石小泉八雲、ラファエル・フォン・ケーベルなど伝説の講師陣も登場!警察小説の第一人者が、初の明治警察に挑む! 

サーベル警視庁

サーベル警視庁

 

報道担当者に比較的読者が多いのが警察小説という分野です。ベストセラーとなった「64」などは、警察と記者クラブの関係がよく描かれていたと聞きました。とりたてて事件がないうちは、各社の記者が勝手に仕事をしているのが記者クラブです。かけだしの記者はだいたい県警の記者クラブを振り出しに仕事のイロハを学びます。警察の広報や、結紮組織の上下関係を抑えておかないと、いざ事件が起きた時抜いた抜かれたの大騒ぎになるからです。

小説で描かれるような緊迫した関係はめったに起こるものではなく、陰謀めいた内紛も物語だから描けるものです。それでも、読者がつくということは、描かれているものを煎じ詰めていくと、日頃の取材で感じ取った気配とよく似た世界が重なって見えてくるからかもしれません。他社に先んじて一報を取りたい各社と情報をできれば出したくない当局側との駆け引きは、警察関係者や取材記者にとってみれば、いつもの出来事なのです。

本書はエンタメ系で評価が分かれる作品のようですが、愛読者のみなさんの反応が気になります。