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本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

「権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書、日米安保をどう報じたか」

「この部屋に巨大な象がいる*1」と声を上げるのがジャーナリズムの役割です。

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「権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書日米安保をどう報じたか」高田昌幸 著、大西祐資 著、松島佳子 著(旬報社)

調査報道は、瀕死のジャーナリズムを救えるのか?
前著『権力vs.調査報道』から5年…。原発事故から安保法まで、
激動の時代に刻まれたスクープの数々。
その裏側とノウハウを取材記者が語り尽くす。
目次
1防衛の壁を崩す
●秦融氏・木村靖氏(中日新聞)に聞く
日々飛び立つ自衛隊機 「いったい何を運んでいるのか」 その自問を執念で追いかけた
●石井暁氏(共同通信)に聞く
首相にも防衛相にも内密 「自衛隊 独断で海外情報活動」の記事はこうして生まれた
2 原発事故の「真相と深層」に迫る
●日野行介氏(毎日新聞)に聞く
原発事故は終わっていない どこからどう「その後」に切り込むか
●萩原豊氏(TBS)に聞く
「なぜ原発事故の現場に行かねばならないか」 諦めず上層部を説得
組織として筋を通す 調査報道に必要な胆力とは
3 情報公開請求を駆使する
●日下部聡氏(毎日新聞)に聞く
憲法解釈の変更 隠された真実を追え 内閣法制局の裏側に「情報開示請求」で迫る
4 調査報道の新しい形を目指す
●アレッシア・チェラントラ氏(フリージャーナリスト)に聞く
「個」のジャーナリストとして立つ 取材情報はシェアする時代
調査報道記者の連携が「次」を切り開く
●立岩陽一郎氏(ジャーナリスト)に聞く
調査報道は市民のためにある その未来を考え、行き着いた先
権力監視の条件と環境 高田昌幸
なぜジャーナリズムが絶滅へ向かうのか 大西祐資
インタビューを終えて 松島佳子

地域放送局で放送された「情報番組」が、放送に対する信頼を揺さぶっています。

放送法の4条「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」は、放送に携わる者に複眼的な倫理を持つことを求めています。そのためには、問題に対して疑問を持つことともに、多くの角度に向けて取材が必要です。一方的な立場から勝手にものごとを判断したりすることはあってはなりません。

ところが、この情報番組を制作したプロダクションは、一方的な視点で制作に当たったことを自ら認め、開き直るような発言を行いました。

特定の対象向けに消費されるコンテンツであるならば、たとえ内容が奇想天外な物語や主張であっても視聴対象が限られています。今回の問題は、特定の対象向けにコンテンツをつくる感覚で、制作会社が"報道番組"を作り、納品された放送局はそのまま放送してしまった点にあります。報道機関であることをわきまえた放送局では、コンテンツの制作を制作プロダクションに委託したとしても、放送法4条に照らし合わせて品質管理を行います。

今回の事例の場合、放送局は番組の枠を売り、買い取った会社が制作会社に番組をつくらせるという「番組枠を買い取る形式」で放送されたものでした。放送局側が直接品質管理を行いにくい構造が、結果的に放送に対する信頼を揺さぶってしまったと言えます。

自らを正当化して開き直る制作会社とは対照的に、放送局側はすぐに謝罪したから騒ぎは広がらずに済みそうですが、立場が逆転するような事態が今後起きないか気になりました。なぜなら、ネットの普及に伴い放送局の経営基盤が揺らいできているからです。放送法の4条が形骸化した場合、放送局の時間枠を手に入れたスポンサーが通販番組のような感覚でニュース番組をつくり、その中で悪意を持った放送を流さないとも限りません。

権力に立ち向かうこととは、この仕事に携わる人が持つべき倫理規定そのものです。

権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書、日米安保をどう報じたか

権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書、日米安保をどう報じたか

 

 

elephant in the room で"部屋にいる象"ですが、明らかにみんなが気づいていながら触れようとしない話題などに対して使われる表現です。

*1:elephant in the room で"部屋にいる象"ですが、明らかにみんなが気づいていながら触れようとしない話題などに対して、アメリカでよく使われる表現です