ブルータス「危険な読書」で紹介された日常の歪みを垣間見る文学。編集者の末井昭さんが選んだ「ノートリミングの世界」にこそ本当の面白さが潜んでいる本。
「ゼロ発信」赤瀬川原平 著(中央公論新社)
2000年問題が騒がれていた時、ゼロからのスタートとはどういうことかを発想の原点として、身辺におきる出来事を日記風に綴ったエッセイ風小説。『読売新聞』朝刊に連載されていたものを単行本化。
小説でもあり、エッセイのようなものでもある。(品切れ)
「日日雑記」武田百合子 著(中央公論社)
通信販売、水族館、美空ひばり公演、愛猫の死…世事万端に興味をもつ天性の無垢な芸術者が、身辺の出来事と折々の想いを、時には繊細な感性で、時には大胆な発想で、丹念につづった最後のエッセイ集。
武田百合子の遺作。観察する視点が際立っている。ものの見方がシニカル。
「自殺直前日記 改」 山田 花子 著、赤田祐一 編(鉄人社)
山田花子という漫画家をご存知ですか ?
1992年5月、24歳で永眠した彼女は、『ヤングマガジン』『月刊漫画ガロ』などの漫画雑誌で活躍していました。生きづらさを抱えた登場人物たちを執拗に描くことで評価されましたが、繊細すぎて統合失調症を患い、高層住宅の11階から飛び降りることで命を絶つのです。彼女の死は読者の心に重いしこりを残しました。
それから約4年後の1996年、山田花子が自殺の直前まで綴っていた日記が、関係者の手によって一冊の書籍として出版され、ベストセラーになりました。皮肉にも、彼女の存在はこの本を通じて、生前よりもより多くの人に知れ渡ることになったのです。
本書は山田花子の、そのベストセラー『自殺直前日記』の復刻版です。
前著では、編集上の都合で割愛された100箇所以上の文章(四百字詰め原稿用紙換算約90枚)を追加し、新たに編集し直しました。
ではなぜ今、山田花子なのか。
彼女が世を去って20年以上経ちますが、山田花子という作家は未だに忘れられていません。漫画の作品集は入手可能なものが現在5冊あって、読み返しても古くならず、どれも読み継がれています。
山田花子は、その人生が熱心なファンの手により映像化されたり、原画展が行なわれたりと、絶えず引き継がれてきている印象があります。逝去と同時に、彼女を愛した多くの人たちのこころのなかに、生きはじめています。
それは彼女が目をそむけたくなるような世の中の現実に、ただひとり果敢に立ち向かっていったからなのでしょうか。
彼女は結果、こころの地獄に押しつぶされてしまいましたが、皮肉にもその軌跡は、多くの若者たちの胸を打ち、現在も作品を生き続けさせているのです。
本書は山田花子ファンはもちろん、今の時代に “生きづらさ” を感じている、多くの人たちに読んで頂きたい一冊です !
生きづらさを抱えながら過ごした日々が痛いほど率直に描かれた、孤独で壮絶な戦いの記録。(品切れ)