本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

自主制作漫画展示即売会「コミティア」の冊子「ティアズマガジン」を手に入れる

一見商業誌のように見えますが、これは自費出版の冊子(カタログ&ガイドブック)です。

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ティアズマガジンTIA'S MAGAZINE)」 (COMITIA119)

一般的な同人誌即売会では『カタログ』と称されているもので、コミティアでは『ティアズマガジン』(TIA'S MAGAZINE)と呼んでいます。一般参加でコミティアに入場する場合、入場料の代わりとして一人一冊、ご購入いただく必要があります。(ただし、小学生以下は入場無料です)

ティアズマガジン』は両サイドから開けるリバーシブルな仕様で、左開きの内容は「COMITIA GUIDE」として、参加サークルリストとサークルPRカット、参加の諸注意などで構成。右開きの内容は「ティアズマガジン」として、作家・作品を紹介する「P&R」のコーナーや、読み物コラム、アフターレポートなどの記事を中心に編集しています。 『ティアズマガジン』は、コミティアを主体にした情報誌であるとともに、コミティアの主張を伝えるオピニオンマガジンの役割も果たしています。

https://www.comitia.co.jp/html/tias.html

「同人コミック」をとりあげると賛否両論の反応を受けることがあります。しかし、自己表現の場として同人コミックは成長しつつあります。オリジナル表現にこだわる試みが、このカタログにある自主制作漫画展示即売会「コミティア」です。

コミティアとはプロ・アマを問わないマンガ描きたちが自主出版した本を発表・販売する展示即売会です。そこは、枠にはまらない自由で新鮮な個性を持つ作家が腕を試す自己表現の舞台であり、既製品に飽き足らない読者にとってまだ見ぬ、そして求めていたマンガを発見できる宝探しの山でもあります。
コミティアは、そうした一人一人の描き手と読み手がダイレクトに出会える「場」として開催されます。

 

イベント会場では仮装行列やライブパフォーマンスは期待できません。作品内容の一本勝負というこだわりに惹かれた人たちが即売会を育ててきたと聞きました。

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2月12日(日)に開催される定例イベントを前に、今回参加する同人および作品を掲載した冊子が一部書店で発売されています。(残念ながら当店では扱ってません)

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冊子の半分近くは、参加する同人サークルとその作品の紹介で埋め尽くされています。広い東京ビッグサイトを埋め尽くす参加サークルを網羅するには、割り当てられる紹介スペースは限られています。コミック愛好家だけでなく、埋もれた人材を発掘しに商業誌の編集者や他メディアの関係者たちが集まります。(「この世界の片隅に」の作者・こうの史代さんも同人時代に作品を発表したともいいます)

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イベントの特徴は絵の善し悪しはともかく、作家の表現に対する情熱や個性を重視・尊重している点にあります。集まった同時たちは気に入った作品に投票することで、お互いの腕をたたえ読みたい本。伝えたいメッセージを形にしていくのです。 

今回の目玉作品と思われるのがこの2点のようです。

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作品の紹介文も簡潔な文章でわかりやすく書かれています。作品の持つメッセージ性や物語性の強さを読み取ることができます。

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「ゆみりちゃんの世界で」たけのこ 

作者のサイトを辿ると作品に込めた思いを知ることが出来ます。

http://alice-books.com/images/b0bc90e5412e0fcf58a6817f6de826e113412-f.jpg

http://alice-books.com/item/show/5366-2

 

視点を変えれば、洋子が世界の狭さを知って、別の世界に踏み入っていく物語になっている。一方でゆみりは、狭いか広いかにかかわらず、自分が理想とする世界をすでに(高校生にして)もっている。後書きにある「ゆみりちゃんは10代のうちはたまに失敗もしつつ、20代前半には技を極め、死ぬまで完璧な自分の世界で生きていくでしょう。」というくだりには、作者がそう言っているという以上の説得力を、読み終えて受けた。

 

「オアシスの風」チカラクラ

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www.pixiv.net

会場では、商業誌の編集部員が出張で作家の質問に応えるコーナーや、都内大手書店の出張ブースなども開かれる予定で、産業が持つ期待感を受け取ることができます。心に残る作品を生み出す作家さんが育つといいですね。

裏表紙は自主制作漫画展示即売会「コミティア」の入場証兼参加サークルカタログになっています。 

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