本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

家族が支える伝統芸・成田屋の食卓

棚に並んだのは歌舞伎の本。といっても役者さんが毎日食べている家庭の味の本です。

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成田屋の食卓」堀越希実子 著(世界文化社

十二代目市川團十郎夫人が初めて明かす、成田屋(團十郎家)の家庭料理。
春夏秋冬一年を通じ、團十郎海老蔵も食べてきた献立の数々を紹介し、
著者自らが料理や家族にまつわる思い出を語り下ろす。
歌舞伎の芸と伝統が役者に受け継がれていくように、子どもたち、孫たちに伝えたい「成田屋の味」は、
どれも愛情あふれるものだった。
カラー写真多数。巻末には、紹介された料理の作り方も掲載。

第一章 長く続いてきたこと
第二章 役者の女房になる
第三章 役者の女房の仕事
第四章 次世代に伝える
第五章 成田屋の食卓
第六章 着物について
第七章 三年が経って

昭和61年、伝統文化ポーラ賞を受賞された歌舞伎の市川子団次さんのお話を伺いに、ご自宅まで伺ったことを思い出しました。子団次さんの自宅は歌舞伎座の裏にある古いビルの中で奥様と二人暮らしをされていました。2DKほどの部屋には必要最小限の家財しか見当たらず、歌舞伎役者の持つ華麗な印象を裏切るような質素な暮らしぶりだったことが印象に残っています。

www.polaculture.or.jp

役者としての子団次さんは、花形役者でさえ頭を下げるような年功序列の世界の中でも際だった存在でした。しかし、姉さん女房だった奥様に伺うと「この人は役者以外のことはなに一つできない」と叱られるほど生活面ではたよりない存在であることがわかりました。趣味も歌舞伎と割り切り、空いた時間は稽古に費やした、名脇役の芸を支えていたのは家族があってこそのことだと実感しました。

成田屋の食卓

成田屋の食卓