本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

書評七福神の今月の一冊【新刊書評】1月

翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人が選んだ1月のベストです。 

d.hatena.ne.jp

(ルール)
この一ヶ月で読んだ中でいちばんおもしろかった/胸に迫った/爆笑した/虚をつかれた/この作者の作品をもっと読みたいと思った作品を事前相談なしに各自が挙げる。
挙げた作品の重複は気にしない。挙げる作品は必ずしもその月のものとは限らず、同年度の刊行であれば、何月に出た作品を挙げても構わない。要するに、本の選択に関しては各人のプライドだけで決定すること。掲載は原稿の到着順。

 

「深い穴に落ちてしまった」イバン・レピラ 東京創元社

ある日、兄弟が森で穴に落ちてしまった。深さ7メートルの穴からどうしても出られず、木の根や虫を食べて何か月も極限の環境を生き延びようとする。外界から遮断された小さな世界で、弟は現実と怪奇と幻想が渾然一体となった、めくるめく幻覚を見はじめる。名も年もわからない兄弟、なぜか素数のみの章番号、幻覚に織り交ぜられた暗号。寓意と象徴に彩られた不思議な物語は、読後、驚愕と力強い感動をもたらす。暗黒時代を生きる大人のための寓話。

深い穴に落ちてしまった

深い穴に落ちてしまった

 

 

「失踪者」シャルロッテ・リンク 東京創元社

イングランドの田舎町に住むエレインは、幼馴染みのロザンナの結婚式に招待され、ジブラルタルへと出発したが、霧で空港で足止めされ、親切な弁護士の家に一泊したのを最後に失踪した。何があったのか? 結婚後、仕事から離れていた元ジャーナリストのロザンナは、五年後、事件の取材を始める。弁護士は何か知っているのか? 彼女は自発的に姿を消したのか? ロザンナは調査に深入りしていく。そしてエレイン生存の情報が……。

失踪者〈上〉 (創元推理文庫)

失踪者〈上〉 (創元推理文庫)

 
失踪者〈下〉 (創元推理文庫)

失踪者〈下〉 (創元推理文庫)

 

 

「聖エセルドレダ女学院の殺人」ジュリー・ベリー 東京創元社

十代の少女7人が在籍する小規模な寄宿学校で、ある日の夕食中、校長先生とその弟が突然息絶えてしまう。それぞれの事情から家族の元へ帰されたくない生徒たちは、敷地内に死体を埋め、事実を隠して学校生活を続けることにする。翌日、科学の得意なルイーズの分析により、ふたりは毒殺されたと判明。生徒たちは得意分野を活かして大人の目をあざむきつつ犯人を探り始めるが…。

聖エセルドレダ女学院の殺人 (創元推理文庫)

聖エセルドレダ女学院の殺人 (創元推理文庫)

 

 

「真紅のマエストラ」L・S・ヒルトン 早川書房

美術品競売会社に勤めるジュディスは、雑用ばかり押しつけられ、不満が募っていた。そんな時、彼女は競売に出される絵画が贋作ではないかと疑い、調査をするが、解雇されてしまう。以前からバーでホステスのアルバイトをしていた彼女は、当座の生活費を受ける約束をして常連客と南仏へ旅行に行く。だが、不測の事態が起き、やがて彼女は次々と犯罪を犯していく。美術界を舞台に、セクシーに、サスペンスフルに描く話題作。

真紅のマエストラ (ハヤカワ文庫NV)

真紅のマエストラ (ハヤカワ文庫NV)

 

 

「人形 (デュ・モーリア傑作集)」ダフネ・デュ・モーリア 東京創元社

島から一歩も出ることなく、判で押したような平穏な毎日を送る人々を突然襲った狂乱の嵐「東風」。海辺で発見された謎の手記に記された、異常な愛の物語「人形」。独善的で被害妄想の女の半生を独白形式で綴る「笠貝」など、短編14編を収録。平凡な人々の心に潜む狂気を白日の下にさらし、人間の秘めた暗部を情け容赦なく目の前に突きつける。『レベッカ』『鳥』で知られるサスペンスの名手、デュ・モーリアの幻の初期短編傑作集。

 

「アラスカを追いかけて」ジョン・グリーン 岩波書店

アラバマの高校に転入したマイルズは、新しい環境で寮生活をはじめた。タフでめまぐるしい日々がはじまり、マイルズは同じ寮生でカリスマ的魅力をもつ女の子、アラスカにどんどん惹かれていく。だが、ある事件がきっかけで、二人の人生は、永遠に変わってしまった……。人気作家の、ピュアで切ないデビュー作。新訳。

アラスカを追いかけて (STAMP BOOKS)

アラスカを追いかけて (STAMP BOOKS)

 

 

「謀略の都」ロバート・ゴダード 講談社

1919年春。第一次世界大戦後の講和条約締結のため主要国の代表団がパリで協議を進めるなか、英国のベテラン外交官が謎の死を遂げた。長男や代表団の意向に背き、元空軍パイロットの次男マックスは真相究明に乗り出す。父の密かな計略を知った彼は、国際諜報戦の渦中に身を投じることに。
第一次大戦後の混沌を生きるスパイ小説新シリーズ開始!

謀略の都(上) 1919年三部作 1 (講談社文庫)

謀略の都(上) 1919年三部作 1 (講談社文庫)

 
謀略の都(下) 1919年三部作 1 (講談社文庫)

謀略の都(下) 1919年三部作 1 (講談社文庫)

 

 

太陽がいっぱい」パトリシア ハイスミス 河出書房新社

息子を呼びもどしてほしいという、富豪グリーンリーフの頼みを引き受け、トム・リプリーはイタリアへと旅立った。息子のディッキーに羨望と友情という二つの交錯する感情を抱きながら、トムはまばゆい地中海の陽の光の中で完全犯罪を計画するが…。精致で冷徹な心理描写により、映画『太陽がいっぱい』の感動が蘇るハイスミスの出世作。

太陽がいっぱい (河出文庫)

太陽がいっぱい (河出文庫)

 

 

「ガール・セヴン」ハンナ ジェイミスン 文藝春秋

私は必ず日本に帰ってみせる。石田清美、21歳。家族を何者かに惨殺され、ロンドンの底で生きている。そこに飄々とした冷血の殺し屋マークがやってきた。僕が君の家族を殺した人間を探してみようかとマークは言うが―暗黒街からの脱出を願う清美の必死の苦闘を描き切る鋭利なる文体。徹頭徹尾、女子が女子を書いたノワール

ガール・セヴン (文春文庫)

ガール・セヴン (文春文庫)