マンガ家が病気と闘う自分を描いた「闘病マンガ」。朝日新聞の小原篤記者は「私が最近読んで面白かった「闘病マンガ」をいくつかご紹介しましょう」と薦めています。
その魅力は、知らない世界を知る面白さ(怖いもの見たさ含む)であり、健康のありがたさがつくづく身にしみるところであり、そしてどん底から回復へ向かう過程がおのずと「人間賛歌」になり、しかもまるでウソくさくないところ(本物の実感がこもっているのですから当然です)。病院や保険や福祉制度の勉強にもなります。
- 「うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち」田中圭一 著(角川書店)
- 「ふいにたてなくなりました。 おひとりさま漫画家、皮膚筋炎になる」山田雨月 著(ぶんか社)
- 「人間仮免中」卯月妙子 著(イースト・プレス)
- 「死んで生き返りましたれぽ」村上竹尾 著(双葉社)
- 「ふんばれ、がんばれ、ギランバレー!」たむらあやこ 著(講談社)
- 「母がしんどい」田房永子 著(中経出版)
- 「キレる私をやめたい~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」田房永子 著(竹書房)
- 「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」永田カビ 著(イースト・プレス)
- 「一人交換日記」永田カビ 著(小学館)
「うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち」田中圭一 著(角川書店)
パロディマンガの巨星がマジに描いた、明日は我が身のうつ病脱出コミック!
著者自身のうつ病脱出体験をベースにうつ病からの脱出に成功した人たちをレポート。うつ病について実体験から知識を学べ、かつ悩みを分かち合い勇気付けられる、画期的なドキュメンタリーコミック!
田中さんが自分のうつと激しい気温差の関係に気づくあたりは、前述したミステリーの趣。体験者の一人として登場した「折晴子」さんの正体がエピローグで明かされるあたりもイタズラっぽい仕掛けです。
「ふいにたてなくなりました。 おひとりさま漫画家、皮膚筋炎になる」山田雨月 著(ぶんか社)
まぶたが腫れる、筋力が落ちた、手先が異常に冷たい。よくあることだと思ってた。長期入院や助成制度の申請など、さまざまな困難を乗り越えて、社会生活に復帰するまでを描く闘病記!!入院・治療の費用っていくらかかるの?どんな薬を使うの?副作用はあるの?日常生活はどう変わるの?ある日、突然10万人に数人の難病にかかったら…いったいどうする?
検査のため筋肉を剝(は)ぎ取られる感覚を某ファストフードの骨付きチキンに例えるとか、普段から依存していた便秘薬を禁じられ肛門(こうもん)をガッチリふさぐ固い便をついに自らの手で××××するとか、女性にしては思いきった描写が出てきますが、シンプルで素朴な絵柄のおかげでユーモラス。
「人間仮免中」卯月妙子 著(イースト・プレス)
壮絶な過去と統合失調症を抱えた著者が、36歳にして出会った25歳年上のボビー。苛烈で型破りで、そして誰より強靱なふたりの愛を描いた感動のコミックエッセイ。
「死んで生き返りましたれぽ」村上竹尾 著(双葉社)
ある日、自宅で倒れて心肺停止するも、奇跡的に生還した「わたし」。一命は取り留めたが、複数の重篤な合併症や脳浮腫などにより、いつ死んでもおかしくない状態だった。壮絶な闘病生活の中、家族や主治医など周囲の人に支えられ、「わたし」は一歩一歩、「生きなおす」ための希望を取り戻していく―。WEBで大きな感動を呼んだ「生きなおし」闘病コミックエッセイ!!
「ふんばれ、がんばれ、ギランバレー!」たむらあやこ 著(講談社)
函館の病院で働く22歳の新米看護師・たむらは、ある日突然原因不明の高熱に襲われ、動けなくなってしまう。いくつかの病院を転々とした後、たむらは脳神経内科のサトウ医師により、ギラン・バレー症候群と診断される。身体の自由と普通の日々を奪われてしまったたむらの、長く険しい闘いの日々が始まった――。
ふんばれ、がんばれ、ギランバレー! (ワイドKC モーニング)
- 作者: たむらあやこ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/04/22
- メディア: コミック
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「これ以上はよくならない」という病を受け入れる覚悟や、看護する親類家族(娘のためギャンブル狂から改心した父含む)の奮闘も泣けるのですが、圧巻はリハビリ仲間のT君に馬の絵を描いて贈るくだり。
落馬事故で重い脳障害を負ったT君に馬の絵を見せた時の反応はまさに「奇跡」。それが、「絵が好きでよかった! 絵が描けてよかった!」と筆者の生きる力の源にもなります。まさに渾身(こんしん)の力を振り絞って描いたその馬の絵は本書で見られます。
「母がしんどい」田房永子 著(中経出版)
「親との一緒に居るのが息苦しい。でも決別するには罪悪感がある」 そんなあなたにこそ読んでもらいたい、毒親との戦いを記録したコミックエッセイです。 ・自分の宿題を母親がやってしまう ・突然通わされるピアノやバレエ ・ブラジャーを買ってくれない ・アルバイトも学校行事も邪魔される ・自分の友達と親しくなろうとする ・喧嘩したら職場に抗議の電話 これらはほんの序の口。たいへんな毒親に育てられた著者が、苦しみ抜いた末に自立し、自分なりの幸せを掴むまでを描いた感動のコミックエッセイです。
「キレる私をやめたい~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」田房永子 著(竹書房)
『母がしんどい』の田房永子が今まで誰にも言えなかった深刻な悩み―それは“キレる”こと。キレることに苦しんでいた著者が、穏やかな生活を手に入れるまで。
キレる私をやめたい~夫をグーで殴る妻をやめるまで~ (BAMBOO ESSAY SELECTION)
- 作者: 田房永子
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2016/06/30
- メディア: 単行本
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生まれたばかりの子に暴力を振るってしまう前に治さねば!と精神科を受診し、セラピーへ行き……。怒りの根底にあるのは、自分を傷つけた母への憎しみと、心に染みついた「自分はダメ」という思い。それに気づいたことで田房さんは穏やかさを徐々に手に入れていきます。
「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」永田カビ 著(イースト・プレス)
「心を開くって、どうするんだっけ…」28歳、性的経験なし。生きづらい人生の転機。高校卒業から10年間、息苦しさを感じて生きてきた日々。そんな自分を解き放つために選んだ手段が、「レズビアン風俗」で抱きしめられることだった──自身を極限まで見つめ突破口を開いた、赤裸々すぎる実録マンガ。pixiv閲覧数480万超の話題作、全頁改稿・描き下ろしで書籍化。
タイトルから受ける印象に反して、中身は実に真摯(しんし)でまっすぐ。絶望的な孤独感、心の痛みとぬくもりへの渇望がヒリヒリと伝わってきます。なおかつおねえさんとのひとときも(エロとは違いますが)しっかりマンガとして楽しませてくれてサービスたっぷり。
「一人交換日記」永田カビ 著(小学館)
永田カビが、過去と未来の永田カビに向けて綴る、親との確執、初めての一人暮らし、愛のこと、そして・その後・の生活――。セキララエッセイコミック!
本作の連載開始時は『レズ風俗レポ』単行本発売前で、まだ何者でもなかった永田カビ氏ですが、連載中に同作が発売になると周囲の状況は一変。そんな中での心境の変化や、新たな発見、葛藤、苦悩などを己との交換日記という形でセキララに綴っています。連載中は本当に多くの共感のコメントをいただいた渾身作、
読む度に感心するのは、心のうちを描く比喩表現の多彩さと巧みさ。こんなにこんがらがった自分の心を、しかも現在まだほどけきっていない状態のままで、こんな風に分かりやすく面白く解説できるものなのか。そして、ここまで分かっていても、やはり心は救われないのか。いろいろ考えさせられます。