本屋は燃えているか

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魂でもいいから、そばにいて

体験談を黙って聴くだけでも被災された方々を支えることができます。

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「魂でもいいから、そばにいて」奥野修司 著(新潮社)

「今まで話せませんでした。死んだ家族と“再会”したなんて……」「津波に流された愛娘の魂は、三年後、母と祖母のもとに戻ってきた」「亡き伯父から携帯に電話が……」――東日本大震災の遺族が初めて「告白」した奇跡の体験と絶望からの“再生”の物語。感涙必至!

東日本大震災から9年。3.11を前にさまざまな番組が放送されます。震災体験を取材した放送局員からよく聞いたのが亡き人々との再会体験です。瓦礫の上を山に向かって人々が行進していた。亡くなった家族の声を聞いた・・・。体験談は科学的な裏付けが難しく、オカルト番組になりかねないことから、放送する場合も表現には気を遣います。6年前に放送されたNHKスペシャル <シリーズ東日本大震災> 「亡き人との“再会” ~被災地 三度目の夏に~」ですら、賛否両論だったそうです。

被災地で今、「故人と再会した」「声を聞いた」「気配を感じた」といった“亡き人との再会”体験を語る人が後を絶たない。体験した人たちを尋ねていくと、そうした体験は、「故人に一目会いたい」「死を受け入れたくない」「自分だけ生き残って申し訳ない」など、悲しみの現れであると共に、遺された人たちの生き方にも影響を与えている事が分かってきた。

こうした体験談はテレビでは放送されないだけで、被災された多くの方が胸に秘めている現実です。臨死体験を上梓した立花隆さんが語っていたように、私たちは発見できていないものが数多くあり、体験者の声にしっかり向き合うことも大切です。被災地の人たちの声を丹念に拾い集めて歩くのが奥野修司さん(66)の本が出版されました。

数年前から被災地で、まことしやかに囁かれてきた不思議な体験の数々。多くの人にとってかけがえのないものでありながら、「誰も信じてくれないから」と胸に秘められてきたのは、大切な「亡き人との再会」ともいえる体験談であった。中でも圧倒的に多いのは、亡くなった家族が夢に現れるという現象である。

奥野さんは同じ人に3回も同じ話を聞いたといいます。体験談の信憑性を論じ始めると落とし穴から抜け出せなくなります。「生者が死者を記憶に刻み続けることで、死者は生き続ける。私は、その記憶を刻む器なのだ」と語る奥野さんの姿勢が体験談を語ってくれた人に対する謝辞なのかもしれません。

魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く─

魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く─

 

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