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兵士に聞け 最終章

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「兵士に聞け 最終章」杉山隆男 著(新潮社)

中国と対峙する尖閣の「空」と「海」の最前線。頻発する中国の領空侵犯にスクランブル発進を繰り返し、常態化する領海侵犯に24時間体制で哨戒活動を行なう。激しさを増す任務の中で隊員達は何を思うのか。「非常時」が日常となった尖閣の日々を追う。取材開始から24年。現場の声を拾い続け、自衛隊の実像に迫り続けた「兵士シリーズ」ついに完結!

本シリーズが上梓された1993年(平成5年)といえば奥尻島津波の年です。5月にはモザンビーク自衛隊が海外派兵が実施され、自衛隊員のみなさんが救助と防衛の両端に動員され多忙を極めた年だったように思います。一般人にとってそれ以前の自衛隊のイメージは迷彩色で彩られた機械のような存在で、下手に触るとケガをする恐怖に近いものでした。その組織に入り込み、働く人の目線で彼らの生活を掘り起こす著者の仕事は、事実というものの重みと、予断の持つ危うさを気付かせてくれました。2004年私はあるつてで陸上自衛隊第6師団を見学する機会に恵まれました。

第6師団年表

応対していただいた隊員の皆さんからは、かつて抱いた迷彩色で鉄面皮とは違う生活人の匂いがしました。急な命令や配属で転勤(異任地生活)の多い中、隊員の家族たちは近隣の町村で地域になじんだ生活を送っていました。アブナイ場所で働く(任務に就く)肉親を見守る家族の存在に気がつくと、平和の意味もまた違って見えてきます。

兵士に聞け 最終章

兵士に聞け 最終章